LFM2.5-2.6Bとは​何か​ ──スマホの​中だけで​動く​AIエージェントと、​「トークン課金ゼロ」が​成立する​条件を​解説

Liquid AIが2026年8月4日に公開したLFM2.5-2.6Bは、スマホやノートPCの中だけで動くAIエージェント向けのモデルです。メモリ2.5GBに収まりながら、ツールを使う能力では約4倍サイズのモデルと並びました。クラウドに送らない・トークン課金がかからない利点の一方、公式が「制限なく使える」と書くライセンスには年商の条件が付いています。向く仕事と向かない仕事まで解説します。

甲斐ショウジ甲斐ショウジ
CAG主宰/合同会社ATK CAIO(最高AI責任者)
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技術LFM2.5-2.6Bとは何か ──スマホの中だけで動くAIエージェントと、「トークン課金ゼロ」が成立する条件を解説

2026年8月4日、米国のAI企業Liquid AIがLFM2.5-2.6Bというモデルを公開した[1]。スマートフォンやノートPCの中だけで動き、ツールを呼び出して複数の手順をこなす——つまりAIエージェントの用途に特化したモデルである。

結論から書く。これは「小さいモデルが出た」という話ではない。AIエージェントを動かすたびにクラウドへ問い合わせ、使った分だけ課金を払うという前提が、崩れ始めたという話だ。メモリ2.5GB未満に収まりながら、道具を使う能力を測るベンチマークでは約4倍の大きさのモデルと並んだ

ただし万能ではない。コーディングでは大きいモデルに分があると、公式が自分で書いている。そして「制限なく使える」と書かれたライセンスには、実際には年商の条件が付いている。

この記事では、①何が公開されたのか ②手元で動くと何が変わるのか ③公表された数字 ④自社で使える条件(ライセンスの実際)⑤向く仕事・向かない仕事 ⑥試すための手順、の順に見ていく。数値はすべて公式発表とライセンス原文に基づくもので、電脳技巧集団(CAG)自身が検証したものではない。

機内モードのスマートフォンの画面で、AIエージェントがファイル読み込み・検索・API呼び出しの手順を順番に処理している様子のモック
通信を切った端末の中で、エージェントが手順を進める。これが今回のモデルが狙っている姿だ。

01 何が​公開されたのか

公開されたのは2つ。素の状態のLFM2.5-2.6B-Baseと、エージェント用に仕上げたLFM2.5-2.6Bで、どちらも発表当日からHugging Face(AIモデルの共有サイト)でダウンロードできる状態になっている[1][3]

項目内容
パラメータ数26億(2.6B)
事前学習約34兆トークン
コンテキスト長128K
語彙128K(従来の2倍に拡張)
対応言語16言語(日本語を含む)
必要メモリ2.5GB未満
公開形態オープンウェイト(LFM Open License v1.0)

「パラメータ数」はモデルの大きさの目安で、多いほど賢い代わりに、動かすのに大きな計算機が要る。26億は、いま話題になる大型モデルと比べれば2桁小さい部類だ。

目を引くのは語彙を2倍の128Kに広げた点である。公式ブログはこれをラテン文字以外の言語をうまく扱うためと説明している。日本語は1文字あたりのトークン消費が多く、小さいモデルほど不利になりやすい領域なので、日本語を含む16言語が対応言語に並んでいるのは、この拡張と地続きの結果だ。

02 ​「手元で​動く」と、​何が​変わるのか

Liquid AIが挙げる利点は3つ。無料の推論・低遅延・本物のプライバシーである[1]。このうち経営の判断に直接効くのは、1つ目だ。公式ブログはこう書いている。

トークンあたりのコストが消えることで、開発者の作り方が変わる。エージェントを手元のハードウェアで大量に並列化し、数百万トークンを消費するバックグラウンド処理を、追加コストなしで走らせられるようになる。

クラウドのAPIを使うエージェントは、動かした分だけ課金される。だから「とりあえず常時走らせておく」「10通り試して一番良いものを採る」という使い方は、いつもコストとの相談になる。手元で動くモデルには、この相談が要らない。電気代以外の限界費用がゼロだからだ。

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2つ目の「本物のプライバシー」は、業種によっては導入の可否そのものを決める。顧客情報・カルテ・図面・未公開の見積といったデータを外部のAPIに送れない現場では、クラウド型のエージェントはそもそも検討の土俵に乗らない。端末の中で完結するなら、この壁が消える。

WHERE THE WORK HAPPENS CLOUD API 手元の端末 入力を送る 外部サーバー 推論する データは端末の外へ出る/往復のたびに待ち時間 COST PER RUN 使った分だけ課金 → 常時走らせる・大量に並列で試す使い方は   コストと相談することになる ON-DEVICE 手元の端末 入力も推論も、この中だけ 処理は箱の中だけを回る データは端末から出ない/往復の待ち時間もない COST PER RUN 追加費用なし(電気代のみ) → 常時稼働も、大量の並列も   コストの制約から外れる
変わるのは処理の場所だけではない。「何回動かすか」を費用で決めなくてよくなる点が大きい(Liquid AI公式発表[1]に基づく/CAG非検証)。

03 公表された​数字を​読む

公式のベンチマーク表から、エージェント用途に直結する項目を抜き出す[1]。比較対象はいずれもLFM2.5-2.6Bより大きいモデルだ。太字が最高点である。

ベンチマーク(測るもの)LFM2.5-2.6B
(2.6B)
gemma-4-E4B-it
(8B)
Qwen3.5-4B
(4.7B)
Qwen3.5-9B
(9.7B)
ToolSandbox(道具を使う)77.8365.0075.5576.44
BFCLv4(関数を呼び出す)56.8846.3950.5660.13
Multi-IF(指示に従う)80.0777.3555.6762.55
IFStruct(決めた形式で返す)85.4976.6536.2578.50
IFBench(指示に従う)59.1739.2448.4056.47
LiveCodeBench v6(コードを書く)59.4163.7760.8569.86
BrowseComp+(調べ物をする)26.8915.9024.4627.23

読み方は単純だ。指示に従う系は全勝、道具を使う系もほぼ勝ち(BFCLv4だけ9.7Bのモデルに譲っている)。そしてコードを書く力は明確に負けている

2.6B vs 9.7B / HIGHER IS BETTER LFM2.5-2.6B(2.6B) Qwen3.5-9B(9.7B) 決めた形式で返す(IFStruct) 85.49 78.50 道具を使う(ToolSandbox) 77.83 76.44 コードを書く(LiveCodeBench v6) 59.41 69.86
3.7倍の大きさのモデルを、道具の扱いと形式の順守では上回る。一方コード生成は素直に負けている(数値はLiquid AI公式発表[1]/CAG非検証)。

速度とメモリは次のとおり。CPUだけで動く点が実務上は大きい。

実行環境生成速度メモリ
Apple M5 Max(CPU)220 トークン/秒2.5GB未満
AMD Ryzen AI Max+ 395(CPU)113 トークン/秒2.5GB未満
スマートフォン約30 トークン/秒2.5GB未満
NVIDIA H100 ×1枚(高並列時)約15,000 トークン/秒
ローカル推論の監視画面のモック。CPU ONLYのバッジとLFM2.5-2.6Bのタグが付き、220 tok/s・113 tok/s・2.5GBの数値が並んでいる
公表値をそのまま並べると、2.6BがCPUだけで実用速度に届いていることが分かる。

スマホで約30トークン/秒は、日本語を読んでいて詰まらない程度の速さだ。そしてGPUを1枚積んだサーバーなら、1日あたり約13億トークンを処理できると公式は書いている。エージェントに下調べや監視を延々とやらせる用途では、この数字が効いてくる。

04 自社で​使えるか​ ──​「制限なく​使える」の​実際

ここが、この記事でいちばん実務に効く部分だ。公式ブログの末尾には、モデルの特徴としてこう書かれている[1]

オープンウェイト ── 制限なくダウンロード・微調整・デプロイできる

ところが、Hugging Faceのモデルカードのライセンス表記は lfm1.0LFM Open License v1.0 という独自ライセンスである[3]。その原文(全70行)を読むと、第5条にこうある[4]

5. 商用利用の制限
(a) 本ライセンスで許諾される商用利用の権利は、あなたまたはあなたの法人が「基準額」を超えないことを条件とする。
(b) 「基準額」を超える法人による商用利用は、本契約では許諾されない。

そして「基準額」の定義は、年間売上1,000万米ドル——1ドル158円換算で約15億8,000万円である[5]

ライセンスファイルをエディタで開いた画面のモック。第5条の商用利用の制限がハイライトされ、基準額として1,000万ドルが記されている
「制限なく」と書かれているのは公式ブログの本文。ライセンスファイルの第5条には、売上の条件が明記されている。

整理するとこうなる。

使う主体このライセンスで商用利用できるか
年商15億円未満の企業できる(無償・ロイヤリティなし)
年商15億円以上の企業できない(別途Liquid AIとの契約が必要)
非営利・研究目的の団体売上基準の適用外
LFM OPEN LICENSE v1.0 / SECTION 5 $10,000,000 年間売上 約15.8億円 無償で商用利用できる ダウンロード・微調整・自社サービスへの組み込みまで、ロイヤリティなし 別途契約が必要 この契約では許諾されない ← 大半の中小企業はこちら側
読者の多くは金色の側に立つ。ただし、根拠にするのはブログのコピーではなくライセンス原文のほうだ[4]

大半の中小企業にとっては「無償で商用利用できる」で正しい結論になる。それでも、公式ブログの「制限なく」という表現と、ライセンス原文の第5条は、同じことを言っていない。自社に導入するかを判断するときは、紹介文ではなく LICENSE ファイルを開いて確かめる——オープンウェイトのモデルを選ぶときは、これが毎回必要になる。

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05 向く​仕事と、​向かない​仕事

公式ブログは、自分たちの弱点も書いている[1]

これらの結果から、LFM2.5-2.6Bは、速度・プライバシー・ローカル実行が重要な、エッジデバイス上の大量のエージェント処理に適している。より複雑なエージェントタスクやコーディング中心のワークロードでは、依然として大きなモデルの方が適している場合がある。

この但し書きは、03章のベンチマーク表とぴたりと一致する。数字と説明が食い違っていないので、線引きはそのまま信用してよい。

向く向かない
決まった形式で結果を返させる処理ソフトウェア開発の主戦力
社内ツール・APIを順番に叩く定型業務長い工程を自分で組み立てる複雑な仕事
端末の外に出せないデータを扱う処理高度な調べ物(BrowseComp+は大型に劣後)
常時・大量に走らせたい監視や下ごしらえ一発の回答品質を最優先する用途

ひとことで言えば、「賢さの上限を上げる」モデルではなく、「同じことを、外に出さずに、いくらでも回す」モデルだ。手元の業務に当てはめるなら、書類から決まった項目を抜き出す、社内システムを順に叩いて結果をまとめる、届いたメールを分類して下書きまで用意しておく——といった、量が多くて形が決まっている仕事から探すのが早い。

06 試すには​ ──2つの​手順と、​学習の​中身

公式が案内している手順は2つだけである[1]

  • モデルをOpenAI互換のエンドポイントとして立てる(vLLM や SGLang なら1コマンド)
  • 手持ちのエージェント・ハーネスの向き先を、そのエンドポイントに変える

「ハーネス」は、AIモデルに道具を持たせて実際の作業をさせる外側の仕組みのことだ。公式は Hermes Agent・OpenClaw・Pi で設定なしに動くと明記している。実行環境も初日から揃っていて、llama.cpp(GGUF形式)/MLX(Apple Silicon向け)/vLLMSGLangONNX に対応する。手元のMacで軽く試すならMLXかllama.cpp、サーバーに載せるならvLLMかSGLang、という選び分けになる。

SETUP / 2 STEPS STEP 1 モデルを立てる OpenAI互換のエンドポイントとして 起動する(vLLM / SGLang なら1行) STEP 2 ハーネスの向き先を変える いま使っているエージェントの接続先を、 立てたエンドポイントに差し替えるだけ Hermes Agent / OpenClaw / Pi は設定なしで動作 アプリを作り直す必要はない。モデルの置き場所を、クラウドから手元に移すだけで済む。
既存のエージェントを組み替えずに試せることが、導入のハードルを下げている(公式ドキュメントの手順[1]/CAG非検証)。

最後に、なぜこの大きさでツール利用が強いのかに触れておく。Liquid AIは学習の仕上げに、実際のエージェント・ハーネスの中でモデルを強化学習させている[1][2]。ハーネスを改造せず「黒箱」のまま扱い、やり取りの記録だけを取り出す仕組み(Harness Proxy)を用意した、と公式は説明している。

POST-TRAINING / 4 STAGES 01 SFT 教師あり学習 道具の使用・検索・ 作業記録を重点的に 02 TEACHERS 教師モデルの特化 数学・コード・道具など 領域ごとに1体ずつ育てる 03 MOPD 1体に蒸留する 専門家たちの能力を 1つのモデルへ集約 04 AGENTIC RL 実ハーネスで強化学習 本物の道具・指示文・ 対話の癖に合わせ込む ベンチマークのためではなく、現場のツールと指示文の癖に合わせるための最終段階 ツール利用のスコアが大きさに対して強いのは、ここが効いていると読める
4段階のうち、最後だけが「実際に働かせながら鍛える」工程になっている(公式発表[1][2]に基づく/CAG非検証)。

07 まとめ ──何が​手元に​降りてきたのか

LFM2.5-2.6Bが示したのは、エージェントを動かす場所を選べるようになったということだ。難しい推論や本格的なコード生成は、これからも大きなモデルの仕事である。だが「決まった形の処理を、大量に、外に出さずに回す」という領域は、2.5GBのメモリと手元のCPUで足りるところまで来た。

クラウドAPIのエージェント手元で動くエージェント(LFM2.5-2.6B)
動かすたびの費用使った分だけ従量課金電気代のみ(限界費用ゼロ)
データの行き先外部のサーバーへ送る端末から出ない
動かすのに必要なものネット接続とAPIキー2.5GBの空きメモリ
得意なこと難しい推論・コード生成道具を使う定型処理・大量並列
苦手なこと常時稼働はコストが膨らむ複雑な仕事・コーディング
使う条件各社の利用規約と料金年商1,000万ドル未満(LFM Open License v1.0)

検討するときの4点

  • まず自社の年商を条件に当てる——15億円未満なら、このライセンスのまま商用に使える
  • 量が多くて形が決まっている仕事から探す——抽出・分類・下書き・監視。一発勝負の回答品質を求める用途は外す
  • 既存のエージェントを作り直さない——接続先の差し替えだけで試せるので、比較は同じ仕事を両方に流すのが早い
  • コーディングは大型モデルに残す——公式自身がそう書いている。無理に一本化しない

出典・注記

  1. Liquid AI「LFM2.5-2.6B: Deploy Agents Everywhere」2026年8月4日(www.liquid.ai/blog/lfm2-5-2-6b)— ベンチマーク値・速度・メモリ・学習手順・実行環境・「制限なく」の記述。公開日は同ページの datePublished を実測。
  2. Hugging Face Blog「Deploy local agents everywhere with LFM2.5-2.6B」2026年8月4日(huggingface.co/blog/LiquidAI/lfm2-5-2-6b)— 著者6名はいずれもLiquid AI所属。
  3. Hugging Face モデルカード LiquidAI/LFM2.5-2.6Bhuggingface.co/LiquidAI/LFM2.5-2.6B)— ライセンス表記 lfm1.0、対応16言語。
  4. LFM Open License v1.0 原文(同リポジトリの LICENSE ファイル・全70行)第5条「Commercial Use Limitation」および第1条の "Threshold" 定義(年間売上10,000,000米ドル)。引用部は原文の日本語訳。
  5. 円換算は1ドル158円(2026年8月7日時点)で計算。為替により変動する。
  6. 本記事の数値・引用はすべて公式発表およびライセンス原文に基づくもので、電脳技巧集団(CAG)自身によるベンチマーク検証ではない。

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