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Sakana AIは2026年9月11日、複数のAIモデルを使い分ける「オーケストレーター」の新版、Fugu Max と Fugu Ultra v2 を公開しました[1]。Maxは安さを重視した版で、100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドル。Ultra v2は性能を重視した版で、8つのベンチマークのうち5つで最高点だと発表しています。報道では「GPT-6 Astra や Claude Fable 5.1 を使わずに上回った」という見出しが目立ちました。
先に結論です。公式の図と料金表を突き合わせると、見出しのままでは受け取れない点が3つあります。
- 「使わずに」の中身:外したと明記されているのは3モデルだけ。うち2つは、Ultra v2 の学習期限より後に出たモデルでした。Maxの構成図には「Closed & open models」とあり、非公開のモデルも含まれています
- 「上回った」の中身:Ultra v2 が最高点とされる5つのうち3つには、比較図に GPT-6 Astra の棒がありません
- 「安い」の中身:Maxの比較図は Gemini 3.8 Flash を2027年からの価格で置いています。今日の価格なら Gemini のほうが安い。Ultra v2 は、AIを束ねる作業に使ったトークンにも同じ単価がかかります
この記事では、何が出たのか、ベンチマークの図、料金、データの扱いの順に見て、最後に試す前のチェックリストをまとめます。
01 何が出たのか
Fugu は、1つの巨大なモデルではなく、複数のAIモデルに仕事を割り振り、答えをまとめることを学習したモデルです。これを「オーケストレーション」と呼びます。6月の正式版は、CAGでも解説しました。
関連記事 | 6月の正式版と「束ねる」競争「どのモデルが最強か」はもう古い ──Sakana Fuguが見せた、AIを束ねる”司令塔”の競争
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今回で Fugu は4つのモデル構成になりました[2][3]。
| モデル | 位置づけ | 料金(100万トークンあたり) |
|---|---|---|
| Fugu | 性能と応答速度のバランス。日常の既定 | 使われたモデルの標準単価(複数使われても、最上位モデルの単価1本分) |
| Fugu Ultra v2 | 難しい問題で答えの質を最大化 | 入力 $5/出力 $30(27.2万トークン超は $10/$45) |
| Fugu Max(新) | 性能と費用の釣り合いを最大化 | 入力 $2/出力 $6(文脈の長さによらず固定) |
| Fugu Cyber | セキュリティ特化 | 要問い合わせ・申請制 |
月額プランも3段あります(Standard $20/Pro $100/Max $200。どれでも Fugu・Ultra・Max を使える)。API は OpenAI 互換で、既存の Fugu 利用者はパラメータ1つの変更で切り替えられるとしています。EU・EEA では利用できません[2]。
02 「最先端モデルを使わずに」はどこまで本当か
公式ブログの Ultra v2 の図には、次の注記があります[1]。
Fugu Ultra v2 の学習期限は2026年8月28日。Fable 5、Fable 5.1、GPT-6 Astra は Ultra v2 のモデルプールに含まれていない。
Sakana AI「Introducing Fugu Max and Fugu Ultra v2」ベンチマーク図の注記(訳はCAG)
外したと明記されているのは、この3つだけです。各モデルの公開日を並べると、次のようになります。
Fable 5.1 と GPT-6 Astra は、学習期限より後に出たモデルです。製品ページのFAQには「新しい最先端モデルが公開されてから、組み込んだ Fugu を出すまでに約2週間の学習と評価をかける」とあります[2]。2つが入っていないのは、設計上の選択というより、時期的に間に合わなかった可能性があります。Fable 5(6月公開)を外した理由は書かれていません。
もう一つ、Fugu Max の説明文は「オープンモデルと特化型モデルを大量に束ねた」と書いています。ところが同じページのモデル構成図には、候補モデルの下に 「Closed & open models」(非公開のモデルとオープンモデル)とあります[1]。Maxは非公開のモデルも使う構成です。Ultra v2 のプールに何が入っているかの一覧は、発表・製品ページ・モデルページ・料金ページのどこにも見つけられませんでした(別の場所にある可能性は否定できません)。
「特定のベンダーに依存しない」という Sakana の主張は、1社のモデルが止まっても差し替えられるという意味で読むのが正確です。非公開のモデルを一切使わない、という意味ではありません。
03 ベンチマークの図を読む ──「5つで最高」のうち3つには Astra の棒が無い
公式が載せた Ultra v2 の比較図から、8つのベンチマークを1行ずつ書き出しました[1]。
| ベンチマーク | Ultra v2 | Ultra v2 以外の最高 | 図に GPT-6 Astra |
|---|---|---|---|
| HLE(テキスト) | 56.3 | 59.1(Fable 5.1) | あり(54.7) |
| GDP.pdf | 34.3 | 30.7(GPT 5.6 Sol) | なし |
| Chartography | 48.3 | 46.2(Fable 5.1) | なし |
| SWEFish(Sakana社内) | 71.8 | 69.8(GPT-6 Astra) | あり |
| DeepSWE | 74.3 | 73.0(GPT-6 Astra) | あり |
| ProgramBench | 81.0 | 85.4(GPT-6 Astra) | あり |
| GPQA-D | 95.5 | 96.0(GPT-6 Astra) | あり |
| Toolathon | 80.6 | 80.6(Opus 5・同点) | なし |
Ultra v2 が最高点(同点を含む)なのは太字の5つで、公式の「8つ中5つ」と一致します。そのうえで、次の点に注意が要ります。
- GDP.pdf、Chartography、Toolathon の3つには GPT-6 Astra が載っていません。「Astra を上回った」と言えるのは、残りの2つ(SWEFish、DeepSWE)です
- SWEFish は Sakana の社内ベンチマークです
- DeepSWE の差は1.3ポイント(74.3 対 73.0)。一部の報道は Astra を74.1としていますが、公式の図では73.0です
- Chartography では、報道が引用する Opus 5(27.3)や Fable 5(29.5)より、Fable 5.1(46.2)と GPT 5.6 Sol(45.0)のほうが Ultra v2 に近い値です
- Astra が載っているベンチマークでは、ProgramBench と GPQA-D は Astra が上です
ベンチマークはどれも Sakana 自身の測定で、第三者による再現ではありません。
04 料金を読む ──単価表だけでは1回の費用が決まらない
Fugu Max:比べる相手の価格で、結論が変わる
公式は「Maxの出力単価は Sonnet 5、GPT 5.6 Terra、Kimi K3 より40〜60%安い」と書いています[1]。図の値(出力 Sonnet 5 $10、Terra $12、Kimi K3 $15)と計算は合っています。
気になるのは、同じ図で強い競合として並んでいる Gemini 3.8 Flash です。Sakana の図は Gemini 3.8 Flash を入力 $1.50/出力 $7.50 の位置に置いています。Google の公式料金表では、これは2027年1月1日からの価格で、2026年12月31日までは入力 $0.75/出力 $3.75です[8]。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| Gemini 3.8 Flash(〜2026年12月31日) | $0.75 | $3.75 |
| Fugu Max | $2 | $6 |
| Gemini 3.8 Flash(2027年1月1日〜) | $1.50 | $7.50 |
今日の価格で比べると、Gemini 3.8 Flash は Fugu Max より安いことになります。同じ図のスコアでは、HLE(46.8 対 44.7)、DeepSWE(73.7 対 70.8)、Chartography(40.9 対 37.0)で Gemini 3.8 Flash が上です。Terminal Bench 2.1(89.5 対 89.4)、GPQA-D、AA-LCR、GDP.pdf、SWEFish、CharXiv では Max が上でした。
来年以降の価格で比べるという図の置き方自体は、長く使う前提なら不自然ではありません。ただ、今月試算するなら今日の価格で並べ直す必要があります。
Fugu Ultra v2:単価は Opus 5 より高く、束ねる作業にも課金される
Ultra v2 の単価を、図に並ぶモデルの公式価格と並べます[3][5][6][7]。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| GPT 5.6 Sol(少なくとも11月21日までの割引価格) | $4 | $20 |
| Claude Opus 5 | $5 | $25 |
| Fugu Ultra v2 | $5 | $30 |
| Claude Fable 5.1 | $10 | $50 |
| GPT-6 Astra | $10 | $50 |
出力単価で見ると、Ultra v2 は Opus 5 より高く、Fable 5.1 や GPT-6 Astra の6割です。さらに、料金ページには次の説明があります[3]。
Fugu Ultra は、ユーザーに見える入力・出力とは別に、オーケストレーションに使ったトークンを返す。これらは入力・出力トークンの外にある実際の使用量で、最終的な料金に含まれ、単価は通常の入力・出力と同じ。
Sakana AI Console「Pricing」Usage field details(訳はCAG)
つまり、AIに仕事を割り振り、答えをまとめる過程で使ったトークンにも $5/$30 がかかります。1回の依頼にかかる費用は、単価表ではなく、応答に含まれる orchestration_input_tokens と orchestration_output_tokens を見ないと分かりません。Fugu Max にも同じ課金があるかは、料金ページに書かれていません。
05 データの扱い ──Ultra と Max は「使うモデルを外せない」
日本の企業が導入を検討するとき、効いてくるのはここです。FAQ とモデルページには、次のように書かれています[2][3]。
- 標準の Fugu は、コンソールの設定から特定のモデルを外せる(データ・プライバシー・コンプライアンスの要件に合わせるため)
- Fugu Ultra と Fugu Max は、モデルの組み合わせが固定で外せない。特定のモデルやプロバイダー構成が必要な企業は、個別に相談する
Maxには非公開のモデルも含まれます(02章)。Ultra と Max を使うと、どのプロバイダーのモデルに依頼内容が渡るかを、利用者側で絞れません。社内規程で「このベンダー以外にデータを出さない」と決めている会社は、標準の Fugu で除外設定を使うか、Sakana に個別構成を相談することになります。
あわせて、利用規約とプライバシーポリシーには次の記載があります[4]。
- 送った内容は、Sakana のモデルの学習に使われることがある。画面上の方法で学習利用の停止(オプトアウト)を申し出られる
- 個人データは、利用者の国の外にいる第三者に移転されることがある
06 試す前のチェックリスト
- Ultra v2 の比較図で GPT-6 Astra が載っているのは、8つのうち5つだけだと理解した
- 自社の業務に近いタスクで、Fugu Max と Gemini 3.8 Flash(今日の価格)を同じ条件で試した
- Ultra v2 の見積もりに、
orchestration_*_tokensの分を含めた - Ultra・Max はモデルの組み合わせを外せないことを、情報システム部門と共有した
- 学習利用のオプトアウトをコンソールで設定した
- 新しい最先端モデルが出るたびに、約2週間後の Fugu 更新で結果が変わりうることを前提にした
07 まとめ
- Fugu Max は入力 $2/出力 $6 の安価な版、Ultra v2 は性能重視の版。どちらも OpenAI 互換 API で、既存の Fugu 利用者はすぐ切り替えられる
- 「GPT-6 Astra と Fable 5.1 を使わずに上回った」は、2つが学習期限より後に出たモデルで、比較図の8つのうち3つには Astra が載っていないという条件つき
- 費用は単価表だけで決まらない。Max は比べる相手の価格の置き方で、Ultra v2 はオーケストレーションのトークンで、実際の金額が変わる
ベンチマークの「最高点」は、何と比べたかまで読んで初めて数字になる。導入の判断は、自社のタスクと今日の価格で測り直してからで遅くありません。
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出典・注記
- Sakana AI「Introducing Fugu Max and Fugu Ultra v2: Orchestrating the Pareto Frontier」2026年9月11日。https://sakana.ai/fugu-max-release/ 本文、モデル構成図、ベンチマーク図2枚。数値はいずれも Sakana AI 自身の測定。
- Sakana AI「Sakana Fugu」製品ページ(2026年9月15日閲覧)。https://sakana.ai/fugu/ モデル構成、FAQ(プールの固定、約2週間での更新、料金、EU・EEA非対応)。
- Sakana AI Console「Models」「Pricing」(2026年9月15日閲覧)。https://console.sakana.ai/pricing オーケストレーショントークンの課金、Ultra・Max のプール固定。
- Sakana AI API Platform「Terms of Service」「Privacy Policy」(いずれも2026年7月21日発効、2026年9月15日閲覧)。
- Claude Developer Platform「Pricing」(2026年9月15日閲覧)。Claude Opus 5 は入力 $5/出力 $25、Claude Fable 5.1 は入力 $10/出力 $50。
- Claude Developer Platform「Release notes」2026年9月1日の項。Claude Fable 5.1 の公開。
- OpenAI API ドキュメント「gpt-6-astra」「gpt-5.6-sol」モデルページ、および API changelog 2026年9月3日の項(2026年9月15日閲覧)。
- Google AI for Developers「Gemini Developer API pricing」Gemini 3.8 Flash の項(2026年9月15日閲覧)。
数値・仕様は各社の公式発表・料金表に基づくもので、CAG自身が検証したものではありません。今回、Fugu を実際には呼び出していません。









