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2026年9月10日、OpenAIが Agents API を公開ベータとして公開しました[1]。ChatGPTのコーディング用エージェント「Codex」を動かしている仕組み(ハーネス=AIに道具を使わせ、作業を段取りする土台)を、OpenAIが管理した状態で丸ごと貸し出すAPIです。会話と作業の状態はOpenAI側に保存され、AIはコードを実行できる隔離環境(サンドボックス)の中で作業します。
同じ種類の基盤は、Anthropicの Claude Managed Agents、Googleの Gemini Managed Agents がすでに出しています。これで大手3社がそろったことになります。
電脳技巧集団(AI職人ギルド)では、公式ドキュメントを読んだうえで実際にセッションを2本立てて動かしました。分かったのは、このAPIは「止めたつもり」が効かない場面がいくつもあることです。受信を切っても作業は続き、作った直後は削除できず、そしてデータを残さない契約(ゼロデータ保持)には対応していません。
この記事で分かること——①何が出たのか ②Claude・Geminiとの違い ③実際に動かした1本の流れ ④受信を切っても止まらないこと ⑤止まらないもの・残るもの ⑥料金の数え方 ⑦導入前に決めること。

01 何が出たのか、4つの部品で見る
公式の説明を一文にすると、「Codexのハーネスを、OpenAIが管理するAPIとして使える」です。セッションの段取り、長くなった会話の要約、途中で落ちたときの復旧はOpenAIが受け持ち、利用側は道具(関数やMCP)と、作業させる環境を選びます。
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| エージェント | 使うモデル・指示・道具・MCPサーバーの設定 |
| 環境 | ファイルを置き、コマンドを実行するサンドボックス(無しでも動く) |
| セッション | エージェントの「常駐する1体」。複数回のやり取りをまたいで仕事を続ける |
| イベント | 送った指示と、作業中に出てくる出力・状態の通知 |
環境は2通りです。OpenAIが用意するサンドボックスと、自社や外部業者の環境をつなぐ方式(Modal・Cloudflare・Vercel・Daytona・Blaxel・E2B・Runloop・DigitalOcean・Oracle Cloud の9社に接続手順あり)。途中で作業を部下のエージェントに分担させる機能もあり、同時に動かせる数は既定で6体です(司令役を除く)。
使うには、APIキーに api.agents.read / api.agents.write / api.responses.write の権限が要り、リクエストには OpenAI-Beta: agents=v1 という見出しを付けます。まだベータです。
02 Claude・Geminiと、並べて比べる
CAGでは7月に、Claude と Gemini の同種の基盤を紹介しました。今回はそこに OpenAI を加えて、3社を公式ドキュメントの記述だけで並べます(2026年9月11日時点)[2]。
関連記事 | 7月に書いた1社目と2社目Claude Managed Agentsとは ──Anthropic版"常駐型AIエージェント基盤"を解説、Gemini版との違いも
→
| 観点 | OpenAI Agents API | Claude Managed Agents | Gemini Managed Agents |
|---|---|---|---|
| 提供状態 | 公開ベータ(2026年9月10日) | ベータ | 公開プレビュー(2026年5月19日) |
| 環境の料金 | 1GBで20分ごとに$0.03、分単位・最低5分 | 作業中(running)の間だけ1時間$0.08 | プレビュー中は無料・無料枠あり |
| 環境の寿命 | やり取りが1時間止まると削除されうる(変更不可) | 確認した範囲では記載なし | 15分で停止・7日で削除 |
| 外への通信(既定) | 許可(実測で access: enabled) | 制限なし | 制限なし |
| ゼロデータ保持 | 対象外 | 対象外(HIPAAの契約も対象外) | 確認した範囲では記載なし |
| 資格情報の渡し方 | Vault(値はAIに見せない) | Vault | 外向き通信の途中で付与 |
いちばん大きな違いは料金の数え方です。Claudeは「AIが実際に働いている時間」だけ、OpenAIは「環境を借りた時間(最低5分)」、Geminiは今のところ環境代がかかりません。同じ仕事でも、待ち時間が長い使い方ほど差が開きます。
逆に3社で共通しているのは、会話と作業の状態を提供側に保存する設計だということ。そのため Claude も OpenAI も、データを残さない契約(ゼロデータ保持)の対象外と明記しています。
03 実際に動かした①——1本の流れを秒で見る
OpenAIが用意するサンドボックスで、小さな作業を1本流しました(モデルは GPT-5.6 Sol、思考の深さは低)[3]。指示は「ファイルを1つ作り、読み返して中身を報告せよ」。受信したイベントの種類と、最初に届いた時刻を記録しています。
| 経過 | 届いたイベント | 意味 |
|---|---|---|
| 8.5秒 | session.created | セッションができた |
| 13.4秒 | turn.output_text.delta | AIが返事を書き始めた |
| 33.2秒 | environment.ready | サンドボックスの準備ができた |
| 36.9秒 | environment.connected | サンドボックスにつながった |
| 46.1秒 | turn.completed | 作業が終わった |
| 46.3秒 | idle | 次の指示を待つ状態に戻った |
目を引くのは順番です。AIは環境の準備を待たずに、13秒で返事を書き始めていました。 サンドボックスがつながったのはその23秒後。画面に文字が出始めても、実際の作業はまだ始まっていない時間帯がある、ということです。
使ったトークンは入力21,639(うちキャッシュ7,525)、出力251。1本の費用は約11〜13円でした[4]。
04 実際に動かした②——受信を切っても止まらない
公式ドキュメントには「イベントの受信を閉じてもタスクは止まらない」「準備中や実行中にセッションを削除すると409が返る」と書かれています。これを確かめるため、「60秒待ってからファイルを作る」作業を流し、セッションIDが届いた6秒の時点で受信を切りました[5]。
受信を切った直後に削除を試すと、409(hosted session provisioning or resource creation has not settled=準備が落ち着いていない)が返りました。その後5秒おきに状態を見ると、17回中16回が作業中。受信を切ってから96.9秒後に待機へ戻るまで、作業は続いていました。作業が終わった後の削除は 200、その後の取得は 404 で、きちんと消えています。

画面を閉じても、仕事は裏で続いている。 途中で止めたいなら、受信を切るのではなく、公式が用意している「実行中の作業を取り消す」操作(cancel)を別に送る必要があります。取り消しても、セッションとそれまでの作業は残ります。
なお、この検証で確かめたのは状態の移り変わりまでです。作業の中身(指示どおりにファイルができたか)は、終わった直後にセッションごと削除したため確認していません。
05 止まらないもの、残るもの
公式ドキュメントには、この種の「止まったように見えて止まっていない」注意書きがいくつもあります[1]。
- 作業完了のイベントが来ても、道具がすべて成功したとは限らない。 結果の中身を確認すること。
- 待機状態(idle)は、安全に止めてよい合図ではない。 次の作業が入る直前にも出るため。
- 自社の環境をつないでいる場合、セッションを削除しても環境は止まらない。 削除を知らせる通知も来ないので、環境は別に止める。
- 作業の途中で接続が切れると、作業完了になっても道具が失敗していることがある。
データの扱いも、ここで押さえておくべきです。OpenAIのデータ管理ページの表で、Agents API(/v1/agents)の行はこうなっています[2]。
| 項目 | Agents API |
|---|---|
| 学習への利用 | しない |
| 不正利用の監視のための保持 | 30日 |
| アプリの状態(会話・作業)の保持 | 削除するまで |
| ゼロデータ保持の対象 | 対象外 |
| 目視確認なしの保持の対象 | 対象外 |
さらに、同じページのデータ所在地(処理する地域を指定する機能)の対象一覧に /v1/agents は出てきません(2026年9月11日時点。ページ全体で1回だけ、上の表の行にのみ登場)。自社の環境をつないでも、ゼロデータ保持の対象にはならない、とも明記されています。
関連記事 | ゼロデータ保持とは何かゼロデータ保持(ZDR)とは何か ──OpenAIが「中身を見ずに不正を見張る」方式を発表、Claudeの30日保持との違いを解説
→

業務データを載せる前に決めるべきは、モデルの賢さより「どこに・いつまで残るか」です。
06 料金は、どう数えるか
Agents API の費用は3本立てです。①モデルのトークン料金 ②道具の料金 ③OpenAIのサンドボックスを使うならコンテナ料金。コンテナは1GBで20分ごとに$0.03ですが、分単位で数え、1回あたり最低5分かかります。
参考として、同じ組織で別の用途に使われているセッション1本の設定も見ました(中身は見ていません)[6]。こちらはサンドボックスを持たず、関数を2つ呼ぶだけの構成で、26秒で終わっていました。入力23,180トークンのうち64%がキャッシュから読まれています。サンドボックスは必須ではない——状態を持った定型処理として使えば、コンテナ料金はかかりません。
07 導入前に、決めること
- データを載せてよいか:ゼロデータ保持の対象外で、会話と作業は削除するまで残る。個人情報や機微情報を扱う業務なら、ここで止まる。
- どう止めるか:受信を切っても止まらない。作業を取り消す操作(cancel)と、セッションを削除する手順(409なら待って再試行)を最初から組み込む。
- 何をもって成功とするか:「完了」の通知だけで判断しない。成果物を読み返す工程を入れる。
- 環境を持つか:サンドボックスが要らない処理なら、環境なしで使えばコンテナ料金はかからない。
- どこの基盤にするか:待ち時間が長い使い方なら Claude の課金方式が有利、試すだけなら Gemini のプレビューが無料。
持ち帰り:3社をひと目で
| 観点 | OpenAI Agents API | Claude Managed Agents | Gemini Managed Agents |
|---|---|---|---|
| 環境代の数え方 | 借りた時間(最低5分) | 働いた時間だけ | プレビュー中は無料 |
| 放っておくと | 1時間で削除されうる | 確認した範囲では記載なし | 15分で停止・7日で削除 |
| ゼロデータ保持 | 対象外 | 対象外 | 確認した範囲では記載なし |
| 受信を切ったら | 作業は続く(CAG実測) | 未検証 | 未検証 |
紹介する前に、自分で1回動かしてみる
電脳技巧集団(AI職人ギルド)は、外部の発表を紹介するときも、手元で動かせるところは動かしてから書いています。AIエージェントを業務に載せる前の設計の相談は こちら からどうぞ。
出典・注記
- OpenAI 公式チェンジログ 2026年9月10日の項、および Agents API の各ガイド(overview/quickstart/configuration/sessions/sessions/manage/sessions/events/sessions/webhooks/environments/openai-hosted/environments/self-hosted/environments/lifecycle/environments/security/multi-agent/tools/mcp/tools/vaults)。いずれもCAGが2026年9月11日に取得。developers.openai.com/api/docs/guides/agents-api/overview
- OpenAI「Your data」(データ管理)ページの
/v1/agents行と、データ所在地の節(2026年9月11日取得)。Claude Managed Agents は Anthropic 公式の overview/pricing/cloud-sandboxes-reference/API and data retention、Gemini Managed Agents は Google 公式の Agents overview/agent environment/changelog(同日取得)。 - CAG実機検証A(2026年9月11日):OpenAIホストのサンドボックス・
gpt-5.6-sol・思考の深さ low で1本実行し、イベントの種類と初出時刻を記録。所要46.3秒。 - 費用は公式の単価(
gpt-5.6-sol入力$4・キャッシュ入力$0.4・出力$20/100万トークン、コンテナ1GB $0.03/20分・分単位・最低5分)から計算した概算。キャッシュ書き込みの割増(未キャッシュ入力の1.25倍)がどれだけ掛かったかは応答から判別できないため幅で示した。1ドル155円。 - CAG実機検証B(同日):60秒待機を含む作業を流し、
agent.session.createdを受信した6.3秒の時点で受信を閉じた。直後の削除は409、以後5秒おき17回の状態取得で16回がin_progress、96.9秒でidle、100.5秒の削除で200、以後404。検証用に作ったセッションは2本とも削除済み。 同じ組織の他のセッションには触れていない。 - 同じ組織の既存セッション1本は、利用者の許可を得て設定と使用量のみを参照した(指示文・入出力の中身は見ていない・記事にも載せていない)。
- 本記事の数値はすべて2026年9月11日時点。ベータのため仕様・料金は変わりうる。3社比較で「記載なし」「未検証」とした項目は、CAGが確認した公式ページの範囲では見つからなかった、または手元で試していないという意味で、存在しないことを示すものではない。









