OpenAIが​「社内で​AIを​どれだけ​使っているか」を​数字で​公開した​ ──人1人日に​対して​3.1エージェント人日、​同じ​定義で​自分たちの​手元も​測った

OpenAIが2026年9月6日、社内でAIエージェントをどれだけ使っているかを実測して公開しました。人間1人日の労働に対して3.1エージェント人日が動いています。同じ定義でCAGの手元のログを数えたところ、1.0を超えたのは今年8月でした。加速の数字と、手を止めた記録が同じ文書に並んでいます。

甲斐ショウジ甲斐ショウジ
CAG主宰/合同会社ATK CAIO(最高AI責任者)
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技術OpenAIが「社内でAIをどれだけ使っているか」を数字で公開した ──人1人日に対して3.1エージェント人日、同じ定義で自分たちの手元も測った

技術ノート | AIの最新動向を、現場目線で

2026年9月6日、OpenAIが 社内でコーディングエージェントをどれだけ使っているかの実測レポート を公開しました[1]。研究者の中央値が1日あたり600ドル超のトークンを消費し、組織全体では 人間1人日の労働に対して3.1エージェント人日 が動いています。同じ日に、主任科学者ジャクブ・パホツキ氏の論考も出ました。そちらの結びは 「責任を持って最大速度でスケーリングを続けられるだけの整合性と監視を解決できたラボは無い」[2]

加速の数字と、減速を望む論考が、同じ日に同じ会社から出ています。 しかも前者のレポートには、加速の指標だけでなく自分たちが手を止めた日の記録まで載っています。

そこで電脳技巧集団(AI職人ギルド)では、公開された測り方をそのまま自分たちのログに当ててみました。この記事で分かること——①公開された数字が何を測っているか ②同じ定義で測ったCAGの手元の数字 ③同時実行と、人が必ず入る境界 ④止めた記録とその後 ⑤中小企業が今日から測れる4つの指標。

暗い作業席がひとつあり、その周りに並列で走る複数のエージェント画面が並んでいる様子
人の席はひとつ、動いている画面は何枚もある。その比率を数字にできるか、という話

01 何が​公開されたか、​2本セットで​読む

同じ日に出た2本は、性格が正反対です。

文書書いた人中身
Research acceleration:
The view inside OpenAI
OpenAI(経済リサーチ)社内でエージェントがどれだけ使われ、何をしているかの実測
An Alien Mindジャクブ・パホツキ
(主任科学者)
進歩の速度と、監視能力の限界についての論考

前者には、去年の秋に掲げた 「2026年9月までに自動化された研究インターンを持つ」という目標に到達した という宣言が入っています。ここでいう研究インターンとは、人の指示のもとで、熟練の研究者なら数日かかる程度の定義済みタスクをこなせるシステムのこと。次の目標は「2028年3月までに自動化されたAI研究者」です。

レポートを出した理由も書かれています。RSI(recursive self-improvement=AIが自分の開発を進め、それがさらに次を速くする循環)への進み方は、各社が公に追跡できるようにすべきだ——というのが彼らの主張で、その先例として自社の数字を出した、という位置づけです。

02 公開された​数字を、​そのまま​読む

利用量。 今年初め、エージェント利用量で並べたときの中央値の研究者は、ごく控えめにしか使っていませんでした。それが8月中旬には 中央値の研究者が1日600ドル超上位10%は1日7,000ドル超のトークンを使っています(社内の実費ではなく、外部の人が同じ量をAPI定価で買ったらいくらか、という換算)。

人とAIの比。 6月より前は、組織全体のエージェント稼働時間の合計が、人間の労働時間の合計を下回っていました。それが逆転し、8時間=1人日で換算して 人間1人日あたり3.1エージェント人日(8月中旬)。

書いた量と実験の数。 コミットの追加行+削除行を貢献者数で割った指標は上がり続け、1人の実験者あたりの実験数は 2026年8月が計測開始(2025年1月)以来の最高

任せる仕事の中身。 1月は研究コードとインフラのコードが大半でしたが、技術的な問い合わせや学習の監視が伸びました。一方で 高レベルの計画立案は依然としてごくわずか。社内の技術サポート用チャンネルへの投稿は減り続け、相談会を完全にやめたチームもあると書かれています。

人の介入。 ここが実務にいちばん効きます。1月から7月にかけて成功率は上がったものの、直近6か月で、成功した4〜8時間級タスクの半数以上に、1回以上の人の介入が入っている。公式の表現では「エージェントは成功のために依然としてかなりの人の舵取りを必要とし、それはタスクが複雑になるほど強まる」。

暗いコードレビュー画面で、機械の書き込みの間に人のコメントが割り込んでいる様子
長時間の仕事ほど、機械の出力の列に人のコメントが挟まる。その頻度は数えられる

03 同じ​定義で、​自分たちの​手元を​測った

ここからはCAGの数字です。公式ページの「View methods」を開くと、測り方が具体的に書かれています。エージェントの総稼働時間を8時間=1人日で換算する/同じターンの中でイベントの間隔が30分を超えたら、その区間は稼働に数えない/ターンの重なりが30秒を超えたら同時実行と数える。 この3つは、そのまま真似できます。

そこで、手元に残っている Claude Code のセッションログ 529ファイル(うち活動のあったセッション514本)を、同じ定義で数えました[3]。人間側は「その日に1件でも作業のあった日」を1人×8時間として数えます。CAGで手を動かしているのは主宰1人なので、比較の形はOpenAIと同じになります。

月(CAG実測)エージェント稼働稼働日人1人日あたりのエージェント人日同時4本以上の日
2026年7月58.6時間19日0.391日
2026年8月308.4時間31日1.2424日
2026年9月(8日まで)130.5時間8日2.048日
人1人日あたりの「エージェント人日」 同じ3つの定義(30分ルール/8時間=1人日/30秒の重なり)で数えた 1.0=人と同じだけAIが動いた線 CAG 2026年7月 CAG 2026年8月 CAG 2026年9月 OpenAI 研究組織 (8月中旬・公表値) 0.39 1.24 2.04 3.1 CAGが1.0を超えたのは8月。OpenAIの研究組織が超えたのは6月。同じ形の曲線を2〜3か月遅れでなぞっている
棒の長さは値そのままの比率(3.1を560pxとした)。CAGは自社ログの実測、OpenAIは公表値

OpenAIが6月に超えた「1.0」の線を、CAGの手元は8月に超えていました。 そして9月の8日間は2.04で、OpenAIの8月中旬の3.1に対して、2〜3か月遅れで同じ形の曲線を描いています。1人で回している事業所と、フロンティアの研究組織が、同じ指標で同じ向きに動いている——これは測るまで分かりませんでした。

なお、手元に残っているセッションログは 2026年6月28日以降 です。それ以前は保持期間の外に出ていて残っていません。「無かった」のではなく「残っていない」ので、1月からの推移は測れない、と正直に書いておきます。

04 同時実行と、​人が​必ず​入る​境界

同時実行。 OpenAIは「4本以上を同時に走らせた研究者の割合」を見ています。CAGの手元では、活動のあった 60日のうち33日(55%)で、4本以上のセッションが同時に動いて いました。最も多かった日は15本(2026年9月1日)。

介入。 セッションの稼働時間で分けて、人が実際に打ったプロンプト(ツールの応答ではなく人間の入力)を数えると、はっきりした境界が出ました。

人の介入が1回以上入ったセッションの割合 CAG実測・514セッション(2026-06-28〜09-08) 0% 100% 平均プロンプト数 〜30分(375本) 30分〜1時間(43本) 1〜4時間(63本) 4〜8時間(18本) 8時間〜(15本) 16.0% 95.3% 100% 100% 100% 1.3 3.8 10.0 31.3 77.4 この線から下は例外なし——1時間を超えたセッションは、96本すべてで人が口を挟んでいる
棒は割合そのままの比率(100%を520pxとした)。右端は1セッションあたりの平均プロンプト数
セッションの稼働時間本数人の介入が1回以上平均プロンプト数
〜30分37516.0%1.3
30分〜1時間4395.3%3.8
1〜4時間63100%10.0
4〜8時間18100%31.3
8時間〜15100%77.4

OpenAIは4〜8時間級のタスクについて「成功したものの半数以上に1回以上の介入」と書きました。CAGの手元では、同じ時間帯の 18本すべてに介入があり、平均31.3回。差の主因はおそらく道具の性格です。非同期で投げっぱなしにできるエージェントと、対話しながら進める手元のエージェントでは、「介入」という語の重みが違います。

それでも、両方の数字が同じことを言っています。長い仕事ほど、人が何度も入る。 30分で終わる仕事の8割は人が一度も口を挟まずに終わるのに、1時間を超えた瞬間に例外がなくなる。HITL(Human in the Loop=重要な判断は人間が最終決定する)は思想の話ではなく、こういう分布の話です。

書いた量も同じ方法で数えました[4]。2026年第2四半期は457コミット・226,486行、第3四半期は 1,776コミット・648,495行(9月8日まで)。コミット数は3.9倍ですが、1コミットあたりは496行から365行へ小さくなっています。量が増えたというより、刻みが細かくなって回数が増えた、というのが実態でした。

05 同じ​レポートに​載っていた、​止めた​記録

このレポートが景気のいい発表と違うのは、加速の数字と、手を止めた記録が同じ文書に並んでいることです。

暗い運用ダッシュボードでGPU割当が急落し、制限付きで一部だけ再開している様子
止めた日と、戻したときの水準。レポートにはこの区間の説明が付いている

7月20日、エージェントが自社の研究インフラを侵害したことが判明し、学習に使っていたコンテナ基盤を一時停止。制限を大幅に足したうえで戻し、配備予定の最新モデルの強化学習を2週間止めました(強化学習=モデルに試行錯誤させて上達させる学習方法)。7月20日から8月6日のAstra級の計算のうち大半は、安全とセキュリティの改修が効いているかを確かめるための実行だった、と注記されています。

AIエージェントが本番インフラに侵入したの記事のサムネイル 関連記事 | この停止のきっかけになった事故AIエージェントが本番インフラに侵入した ──OpenAIとHugging Faceが公表したセキュリティ事故を解説

8月7日、Astraが自社の枠組みで「重大なサイバー能力」を持つ可能性が出たため、より高いセキュリティ環境でしか動かせない制限が加わりました。その翌週、Astra級のGPU割当は59.2%減った一方、他のモデル級への割当が17.2%増え、減った分の約85%を吸収しています。分析対象の合計割当は、ほとんど変わりませんでした。

OpenAI Astra が重大なサイバー能力に到達した記事のサムネイル 関連記事 | 8月7日の制限は何だったのかOpenAI Astra が「重大」なサイバー能力に到達 ──初の指定と、正当な業務まで止まりうる安全対策
制限を入れた翌週、計算資源はどこへ行ったか 2026年8月7日のAstra向け制限の後・週次のGPU割当の変化率(OpenAI公表値) Astra級 他のモデル級 −59.2% +17.2% 増えた分が、減った分の約85%を吸収 棒の長さは変化率そのままの比率(1%=5px)。合計の割当はほとんど変わっていない
制限をかけた側の計算資源は止まらず、制限のかからない側へ移った

OpenAI自身がここから引き出している含意が率直です。新しい制御を入れても、計算資源は遊ばず、別の用途に流れる。 止めたつもりの分がどこへ行ったのかまで見ないと、規制も社内ルールも効果を測れない、という話になります。

06 同じ​日に​出た、​もう​1本

主任科学者パホツキ氏の論考は、同じ日に、逆を向いています。要点は3つ。

思考の連鎖(CoT)の監視が効きにくくなっている。 モデルの推論過程を読んで挙動を確かめる手法が、①推論と対話・ツール利用が混ざって境界が曖昧になった ②モデルが自分の推論過程を扱うのが上手くなった ③言語化した推論なしでも賢くなった、の3点で 徐々に頼れなくなりつつあると、自社の評価として書かれています。

ボトルネックは能力ではなく、監視への確信になる。 「AIの進歩は、監視への確信によって制約されるようになると考えている」。

そして締めの一文です。

現時点で、責任を持って最大速度でスケーリングを続けられるだけの整合性と監視を解決できたラボは無いと考えている。共通の安全基準ができるまで、自発的な減速が当たり前になることを期待し、望む。

ジャクブ・パホツキ「An Alien Mind」2026年9月6日[2]

加速の実測レポートと、減速を望む論考。この2本を同じ日に出したこと自体が、レポートの「止めた記録」と同じ構造をしています。

07 中​小企業の​現場が、​今日から​測れる​こと

ここまでの数字は、規模こそ違え、測り方は誰でも真似できます。CAGが実際に使ったのは、ログのタイムスタンプと git log だけです。専用の分析基盤も、追加の契約も要りませんでした。

  • エージェント人日 ÷ 人の稼働日:AIが「何人分」動いているかが1つの数字になる。導入の効果を「便利になった気がする」で終わらせずに済む。1.0を超えた月が、その組織の転換点です。
  • 同時実行の本数:1人が同時に何本を見ているか。増えるほど、詰まるのは実行力ではなく人のレビュー能力になります。
  • 時間帯別の介入率:どこから人が必ず入るかが見えると、任せる単位を設計できます。CAGの場合、その線は1時間でした。
  • 1コミットあたりの行数:増えているのが量なのか回数なのかが分かります。CAGは回数でした。

そして、加速の指標だけを見ないこと。OpenAIのレポートで最も参考になったのは、成功率でも金額でもなく、止めた日と、その後に何が起きたかを、同じ文書に書いていたことでした。速くなった数字だけを並べた報告は、経営の判断材料にならない。

持ち帰り:同じ定義で並べるとこうなる

指標OpenAI 研究組織(公表・2026年8月中旬)CAG の手元(実測・2026年9月1〜8日)
人1人日あたりのエージェント人日3.12.04
1.0を超えた時期2026年6月2026年8月
同時4本以上研究者の割合が増加中(数値は図のみ)活動日の55%(60日中33日)・最大15本
4〜8時間の仕事への人の介入成功したタスクの半数以上に1回以上18本すべて・平均31.3回
測り方30分ルール/8時間=1人日/30秒の重なりで同時同じ定義をそのまま適用

作る​側の​数字を、​自分たちの​数字で​確かめる

電脳技巧集団(AI職人ギルド)は、外部の発表を紹介するときも、自分たちの手元で測れるところは測ってから書いています。AI導入の効果を数字にしたい、という相談は こちら からどうぞ。

出典・注記

  1. OpenAI「Research acceleration: The view inside OpenAI」2026年9月6日。金額・3.1エージェント人日・介入率・7月20日/8月7日の経緯・59.2%/17.2%/約85%は、同ページの本文および各図の「View methods」(CAGが2026年9月8日に展開して取得)。図中にのみ存在する値は本記事では扱っていない。openai.com/index/research-acceleration-view-inside-openai/
  2. OpenAI「An Alien Mind」ジャクブ・パホツキ、2026年9月6日。引用は同ページの結び(日本語訳はCAG)。openai.com/index/an-alien-mind/
  3. CAG実測(2026年9月8日):~/.claude/projects 配下のセッションログ529ファイル(うち活動あり514セッション、記録は2026年6月28日以降)を、OpenAIの methods と同じ3定義(30分の非稼働ルール/8時間=1人日/30秒以上の重なりを同時実行)で集計。人間の稼働日は「1件でも活動のあった日」を1人×8時間として数えた。同一セッション内で並列に走ったサブエージェントは1本に潰れるため、同時実行と稼働時間はいずれも過小評価になる。
  4. CAG実測(同日):コミットは現存する40リポジトリ、マージコミットを除き、1コミットあたりの追加+削除行に99パーセンタイル(8,437行)の上限をかけて集計。期間中に新設されたリポジトリを含む。
  5. OpenAIとCAGの数字は、測定対象も規模も異なる。同じ定義で数えたというだけで、同じものを測ったわけではない(特に介入率は、非同期エージェントと対話型エージェントで語の重みが違う)。本記事のOpenAI側の数値はCAG自身の検証ではなく、公式ページの記述に基づく。

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