2026年8月7日、xAI が画像生成AIの新版 Grok Imagine Image 2.0 を公開した[1]。grok.com とiOS・Androidアプリで、新しい「Quality Mode」として今すぐ使える。
公式は「テキストから画像を作る部門と、画像を編集する部門の両方で世界2位」と書いている。ランキングの実データを開いて確かめたところ、その順位は事実だった。ただし2位の根拠になっている投票数は1位の数十分の1で、順位がまだ動く幅もランキング側が明示している。
この記事で分かること——①何が新しくなったのか ②増えたのは作る機能より直す機能だという点 ③「世界2位」を実データで開くと何が見えるか ④APIがまだ提供されていないので今日は業務システムに組み込めないこと ⑤仕事で使うなら見ておきたい3点。
数値は公式発表とランキングサイトの公開データに基づくもので、CAG が画質を独自に比較検証したものではない。ランキングの数字は2026年8月8日時点で実際に画面を開いて確認した値である。
01 何が出たのか ──狙いは「実務で使える画像」
Grok Imagine Image 2.0 は、xAI のチャットAI「Grok」に組み込まれている画像生成機能の新しい世代である。grok.com/imagine と、iOS・Androidのアプリで、Quality Mode という名前で提供が始まった[1]。
公式が掲げた狙いは、きれいな絵を出すことではなく「実際の仕事で使える画像」を出すことだと書かれている。具体的に挙げられているのは3点だ。指示に細部まで従うこと。文字の配置をデザイナーのように設計するので要素の多い密なビジュアルでも崩れず、小さな文字がつぶれないこと。そして一度入れたものを、その後の生成や編集をまたいで保ち続けること。
3つ目は地味に見えて重要だ。画像生成で困るのは、直したい箇所を指示すると直してほしくない箇所まで変わってしまうことだからである。
02 増えたのは"作る"より"直す"道具
今回の追加機能を並べると、方向性がはっきりする。
| 機能 | 何ができるか |
|---|---|
| マジックワンド | 指した領域だけを編集し、それ以外はそのまま残す |
| セグメンテーション | 画像の中の対象を正確に選び取ってから変更する(セグメンテーション=画像を意味のある領域に分割する処理) |
| 背景除去 | 被写体だけを背景が透明な状態で書き出す(透過PNG。資料やバナーにそのまま重ねられる形式) |
| マルチ参照編集 | 1回の生成で最大5枚の画像を入力として使える |
| スマートリサイズ | 比率を選ぶと、足りない部分をモデルが描き足してフレームを埋める |
公式の説明にこういう一節がある。
実際の仕事は反復的だ。最初の生成が完成品になることはめったにない。[1]
これは画像生成を業務で使ったことがある人ほど頷く指摘だ。1枚出して終わりではなく、「ここだけ直す」を何度も繰り返す。その往復のための道具が今回まとまって入った。
マルチ参照編集は特に効く。従来は、商品写真とロゴと背景を別々に作ってから、画像編集ソフトで人間が合成していた。5枚まで同時に入力できると、その手作業の合成工程がなくなる。
スマートリサイズが対応する比率は9種類ある。縦長の1:2から横長の2:1まで、SNSの縦型動画で使う9:16も、スライド向けの16:9も含まれている。1枚作れば掲載先ごとに作り直さなくてよい、という設計だ。
03 「世界2位」を開いてみる
公式ページには、こう書かれている。
テキストから画像を作る部門と、画像編集部門の両方で、世界2位にランクしている。[1]
出典として Arena のリーダーボードが挙げられている。Arena は、利用者に2つのモデルの出力を見せてどちらが良いか投票させ、その勝敗からスコアを算出する仕組みだ。将棋やチェスの棋力指標と同じ考え方(Elo)で、勝った負けたの積み重ねで点数が動く。
そこで、実際にArenaを開いて確認した。以下は2026年8月8日時点の値である[2][3]。
画像編集部門(総投票数 約2,883万、53モデル)
| 順位 | モデル | スコア | 投票数 |
|---|---|---|---|
| 1 | gpt-image-2 (medium) / OpenAI | 1463 ±4 | 184,189 |
| 2 | grok-imagine-image-2.0 (low) / xAI | 1439 ±8 | 5,931 |
| 3 | muse-image / Meta | 1405 ±6 | 47,573 |
| 4 | mai-image-2.5 / Microsoft AI | 1402 ±4 | 155,115 |
テキストから画像部門(総投票数 約590万、76モデル)
| 順位 | モデル | スコア | 投票数 |
|---|---|---|---|
| 1 | gpt-image-2 (medium) / OpenAI | 1380 ±5 | 69,194 |
| 2 | grok-imagine-image-2.0 (low) / xAI | 1320 ±12 | 2,722 |
| 3 | reve-2.1 / Reve | 1302 ±8 | 7,598 |
| 4 | muse-image / Meta | 1283 ±7 | 14,510 |
2位という順位そのものは、確かにそのとおりだった。ただし、数字を並べると3つ気づくことがある。
投票数の桁が違う。2位のモデルに投じられた票は 2,722票と5,931票。1位は 69,194票と184,189票である。桁が1つから2つ違う。票が少ないうちのスコアは、まだ揺れている途中の値だ。
Arena自身が「ぶれる幅」を出している。各行には順位の変動範囲が併記されていて、テキストから画像部門の2位は 「2位から3位」 と表示されている。3位との差が、まだ確定していないという意味だ(編集部門は「2位から2位」で、こちらは安定している)。スコアの後ろの ± の数字も同じことを示していて、テキストから画像部門では ±12 と、上位陣の中で最も幅が広い。1位は±5、3位は±8である。
測られているのは "low" 設定。2位に載っているモデル名は grok-imagine-image-2.0 (low) で、低い方の設定で評価されている。今回アプリで提供が始まった Quality Mode に対応する行は、執筆時点のArenaにはまだ見当たらない。
なお、Arena上には grok-imagine-image-quality という紛らわしい名前の行が別にあり、編集部門で7位、テキストから画像部門で14位に位置している。ただしこれは日付から見て2026年5月19日時点の旧世代で、今回の新版ではない。名前だけで新旧を判断すると読み違える。
そして、両部門とも1位は OpenAI の gpt-image-2 のままである。
「世界2位」は誇張ではない。同時に、票が集まりきる前の暫定順位を、低い方の設定で測った値でもある。導入を検討する立場なら、順位そのものより、この3つ(票数・ぶれ幅・どの設定か)を見る癖をつけたほうが実態に近づく。発表された数字が「何と比べた、どの条件の値なのか」で意味が変わる話は、以前にも書いた。
関連記事 | 同じ指標でも土俵が違えば別の数字になるARC-AGI-3のスコアが設定2つで3倍になった ──OpenAIの検証と、ARC側の反論を解説
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04 今日できること、まだできないこと
発表ページの末尾に、短く重要な一文がある。
API access is coming soon.(APIの提供は近日中)[1]
これが意味するのは、現時点では自社のシステムやツールに組み込めないということだ。今日使えるのは、grok.com とiOS・Androidアプリという、人が画面を触る経路だけである。
| 今日できる | まだできない | |
|---|---|---|
| 使える場所 | grok.com/imagine、iOSアプリ、Androidアプリ | 自社サービス・社内ツールへの組み込み |
| 使い方 | 人が画面で操作して1枚ずつ作る・直す | プログラムから自動で大量に生成する |
| 業務での位置づけ | 担当者の制作道具として | 制作パイプラインの部品として |
たとえば「商品登録のたびに画像を自動生成する」といった仕組みは、今日の時点では作れない。逆に、担当者が手を動かして資料やバナーを作る用途なら、今すぐ試せる。
新機能の発表を読むときは、見出しの断定と、末尾の提供条件を必ず突き合わせる。この一文を読み飛ばすと、「もう組み込める」という前提で社内の検討が進んでしまう。
05 15種のテンプレートが示す、想定されている使い道
もうひとつ今回追加されたのがテンプレートだ。よく使う手順をあらかじめ組んだ雛形で、素材を入れると仕上がったものが出てくる。公開されているのは15種類で、その顔ぶれから、xAI がどこを狙っているかが読める。
| 分類 | テンプレート |
|---|---|
| 写真ツール | 写真編集、リイマジン、フォトコラージュ、背景の除去と差し替え、プロ用ヘッドショット |
| 商品 | 商品の色替え |
| マーケティング | 商品ポスター、ECサイト用写真、UGC風写真、グッズ制作 |
| デザインツール | マスコット制作、アイコン制作、キャラクタースプライト |
| ゲームアセット | 小物とUIキット |
| 配信 | 絵文字制作 |
ECサイト用写真・商品の色替え・グッズ制作・プロ用ヘッドショット。狙いが「実務で使える画像」だという最初の宣言と、テンプレートの内容は一致している。
もうひとつ紹介されているのが、設定の一貫性を保つ使い方だ。キャラクター、その人物がいる場所、持ち物を別々に生成しながら、見た目のスタイルを1つに揃え続ける。動画やシリーズものの素材づくりを想定した機能である。
CAG でもブログの図版づくりに画像生成AIを日常的に使っているが、実務でいちばん時間を取られるのは「1枚目を出すこと」ではなく、同じ調子の画像を何枚も揃えることだ。テンプレートと一貫性の機能は、どちらもそこに手を入れている。
06 仕事に組み込むときに見る3点
- 順位ではなく、順位の作られ方を見る。「世界◯位」は、どのランキングの、いつ時点の、どの設定の話なのかで意味が変わる。今回のように投票数が桁で違う場合、数か月後には順位が入れ替わっていることもある。ベンダーの発表は出典を明示していることが多いので、リンクを1回開くだけで確認できる。
- 提供条件を、機能の説明と同じ重さで読む。「APIは近日中」の一文が、そのまま「今期は業務システムに入れられない」という意味になる。機能一覧より先に、誰がどこで使えるのかを見たほうが判断が早い。
- 生成した画像の権利と、社外に出せるかを先に決めておく。商品写真やヘッドショットのようにそのまま外部に出る画像は、生成物の扱いに関する各サービスの規約を確認してから運用に載せる。これは今回のモデルに限った話ではなく、画像生成を業務に入れるとき共通の手順である。
画像生成AIの競争は、絵の美しさから直しやすさへ移りつつある。今回の更新で増えたのが、作る機能よりも直す機能だったことが、その現在地をよく表している。
この記事について
電脳技巧集団(AI職人ギルド)では、AI関連の発表を一次資料にあたって解説しています。ほかの記事は ブログ一覧 から。
脚注・出典
- xAI「Imagine Image 2.0」2026年8月7日(提供形態、マジックワンド・セグメンテーション・背景除去・最大5枚のマルチ参照編集・スマートリサイズ、テンプレート一覧、「世界2位」の記述、「API access is coming soon」)── https://x.ai/news/grok-imagine-image-2
- Arena Image Edit Leaderboard(2026年8月8日時点・総投票数約2,883万・53モデル。順位、スコア、信頼区間、投票数、Rank Spread を画面上で確認)── https://lmarena.ai/leaderboard/image-edit
- Arena Text-to-Image Leaderboard(同上・総投票数約590万・76モデル)── https://lmarena.ai/leaderboard/text-to-image
- xAI のモデルは Arena 上では「SpaceXAI」名義で掲載されている(x.ai の出典注記に明記)
※本記事の機能説明は xAI の公式発表に、順位・スコア・投票数は Arena の公開リーダーボードに基づく。CAG が画質や性能を独自に比較検証したものではない。Arena の数値は投票の蓄積で変動するため、閲覧時点の値と異なる場合がある。









