制作事例 | AI駆動開発の現場から
この記事は、AIが作った"見栄えするHTML資料"を、URLひとつで・ダウンロードなしで・安全に共有できる社内ツールを作った制作事例だ。推測が事実上不可能な専用URL・閲覧認証・本体への直リンク遮断・閲覧ログまで備え、「せっかく作った資料を、社外秘のまま相手に届ける」を解決した[1]。
背景から話す。AIに資料を作らせると、たいていマークダウン(md)という簡易記法で返ってくる。手軽だが、いざ人に見せようとすると——記号がそのまま残っていたり、表が崩れていたり、見出しの強弱が伝わらなかったり。「中身は良いのに、見た目で損をする」。一方、Claudeのような今のAIは、頼めば美しく構造化されたHTML(ブラウザでそのまま表示できる形式)を書ける。色も、レイアウトも、図表も整った"そのまま見せられる資料"だ。
だがHTMLには、共有が難しいという壁がある。ファイルを送っても、相手はダウンロードして開く必要があり、面倒で見てもらえない。社外秘の資料なら、流出も怖い。"良いものを作れる"と"ちゃんと届けられる"は、別の問題だった。この記事では、①なぜHTML資料なのか ②共有の何が難しいのか ③どう解決したか ④セキュリティの中身——の順で見ていく。

01なぜ、資料がmdだとつらいのか
マークダウンは、書く側にとっては快適だ。記号で手早く構造を表せる。だが「読む側・見せる側」に回ると、急に弱くなる。## や ** といった記号がそのまま見えてしまったり、対応していないアプリでは表がただの文字列に崩れたり。資料として人に提示するには、結局どこかで体裁を整え直さなければならない。
提案書、報告書、見積りの説明——相手にちゃんと見てもらいたい資料ほど、見た目が効く。同じ内容でも、整ったレイアウトで届くか、崩れた記号の羅列で届くかで、相手の受け取り方はまるで変わる。人は中身を読む前に、まず見た目で「ちゃんとした資料かどうか」を無意識に判断してしまうものだ。AIが中身を上手に書いてくれる時代になったからこそ、「どう見せるか」のほうがボトルネックになってきた。中身は一瞬で作れるのに、体裁を整える手作業が残っている。これは、もったいない。
02AIは、HTMLが得意だ
ここで一つ、見落とされがちな事実がある。今のAIは、マークダウンよりもHTMLのほうが、ずっと表現力のある出力を作れる。実際、AIを作っている側の人たちも、「整った資料が欲しいならHTMLで出力させるのが良い」と勧めている。[2]
理由は単純で、HTMLは"見た目"そのものを記述できる言語だからだ。マークダウンは「見出し」「強調」くらいの大ざっぱな構造しか表せないが、HTMLなら色・余白・配置・表のスタイル・カード・図——資料に必要な要素をすべて細かく指定できる。AIにとっては、HTMLを書くのも文章を書くのと同じ。「報告書をHTMLで、落ち着いた色合いで、表は見やすく」と頼めば、そのまま提示できる完成品が返ってくる。マークダウンで受け取って体裁を整え直す手間が、まるごと消える。"作る"の問題は、これでほぼ解けていた。残っていたのは、その先だった。
03でも、HTMLには"共有の壁"があった
「じゃあAIにHTMLで作らせればいい」——理屈はそうだが、実際にやってみると、共有の段階で3つの壁にぶつかる。
- ① ダウンロードの手間。HTMLファイルを送っても、相手は一度ダウンロードして、ブラウザで開き直さないと見られない。このひと手間で、忙しい相手は「後で見る」になり、結局見られない。
- ② 見た目が保証されない。メールやチャットに貼ると崩れる。相手の環境次第で、せっかくの体裁が再現されないこともある。
- ③ 流出の不安。ファイルは一度渡したら、相手の手元に残り、転送もできてしまう。社外秘の提案書や見積りを、不特定多数に広がるかもしれない形では渡したくない。
つまり、AIが美しい資料を一瞬で作れるようになっても、それを"安全に・手間なく届ける"ところが空いていた。世の中の共有サービスもあるが、汎用すぎたり、自社のドメインで完結できなかったり。「URLをクリックするだけで、ダウンロードなしで、クローズドな空間で見られる」——この当たり前に見える状態を、自分たちのために作ることにした。
04何を作るか:URLを送るだけ、DLなしで開ける
作ったのは、社内向けのセキュアな資料共有ツールだ。使い方はこうだ。HTML資料をアップロードすると、専用のURLが発行される。そのURLを相手に送るだけ。相手はクリックすれば、ダウンロードなしで、ブラウザにそのまま整った資料が表示される。
ポイントは、相手の負担をゼロにしたこと。アプリのインストールも、アカウント作成も基本不要。リンクを開いて、簡単な本人確認(後述)を済ませれば、もう資料が見えている。PC でもスマホでも、レイアウトは崩れない。「PDFで欲しい」と言われれば、その場でPDF保存もできる。送る側は「URLをコピーして貼るだけ」、見る側は「クリックするだけ」。HTMLの共有を、メールに添付ファイルを付けるより簡単にした。これで、第1の壁(DLの手間)と第2の壁(見た目の崩れ)は消えた。残るは、一番大事な——安全性だ。
05クローズドな安全空間を、作る
「URLで誰でも見られる」では、社外秘の資料は渡せない。第3の壁、流出の不安を消すために、いくつもの仕掛けを重ねた。
- 推測できないURL。共有URLの末尾は、十分に長いランダムな文字列にした。連番のような"次を推測できる"値は使わない。リンクを知らなければ、たどり着けない。
- 本人確認をはさむ。URLを開いただけでは中身は見えない。メールに届く確認リンク(マジックリンク)か、設定したパスワードでの確認を通った人だけが閲覧できる。資料ごとに「事前に登録したメールの人だけ」「メールを入力した人なら誰でも」を選べる。
- 誰がいつ見たかを記録。認証が通るたびに、閲覧ログ(メール・日時)を残す。「送ったけど見てくれたか分からない」がなくなる。
つまり、ただ公開するのではなく、「リンクを知っていて・本人確認も通った人だけ」が入れる、クローズドな空間で資料を見せる。鍵のかかった部屋にURLで招き入れるイメージだ。利便性(クリックで開く)と、安全性(許された人だけ・記録も残る)を、両立させた。
06直リンクを、塞ぐ
セキュリティで、特に気を使ったのが「資料の本体ファイルに、直接たどり着けないようにする」ことだ。いくら閲覧画面に鍵をかけても、資料ファイルそのもののURLが分かれば、認証をすり抜けて中身が取れてしまう——これでは意味がない。
そこで、資料の本体は非公開の保管庫に置き、外から直接リンクできないようにした。閲覧者のブラウザに資料を表示するときも、ファイルへの直リンクを渡すのではなく、本人確認を通った人だけに発行される"通行証"(暗号で署名した使い捨ての証明)を確認してから、サーバー越しに中身を届ける。通行証を持たない人がファイルのURLを直接叩いても、はじかれる。さらに、表示は隔離された枠の中で行い、資料に紛れ込んだ不審な動きが外に影響しないようにもした。「閲覧画面だけ守る」のではなく、本体ファイルまで含めて守る。セキュリティは、一番弱いところで決まる。表に見えないこの作り込みが、「安心して渡せる」を支えている。[3]

07テキストから、AIがHTMLを書く
ここまでで「HTMLを安全に共有する」は解けた。だが、もう一歩踏み込んだ。そもそも、HTMLを用意するところからAIに任せられるようにしたのだ。
このツールには、テキストを入れると、AIが見栄えのするHTML資料に変換する機能を組み込んだ。「こういう内容で、報告書を」と文章を渡せば、AI(Claude)が整ったHTMLを生成する。生成された資料はその場で確認でき、必要ならコードを直接手直しもできる。作る → 整える → 共有する、の全部が、この一つのツールの中で完結する。マークダウンで受け取って、体裁を整え直して、安全に送る方法を探して……という一連の手間が、まるごと消えた。AIは中身も体裁も作れる。だから人がやることは、何を伝えたいかを言葉にすることと、出来上がりを確認すること——それだけになる。これが、「言語化できるものは全て作る」の、ささやかな実装だ。

08締め:"作れる"と"届けられる"は、別問題
このプロジェクトの教訓は、はっきりしている。AIが良い成果物を作れることと、その成果物が相手にちゃんと届くことは、別の問題だ。
AIはいまや、マークダウンより優れたHTMLを、頼めば一瞬で書く。中身を作る部分は、もうボトルネックではない。だが、その良い成果物を「手間なく・崩れず・安全に」相手に届けるところには、まだ設計の余地が残っていた。ダウンロードの手間を消し、見た目を保証し、推測困難なURLと認証で守り、本体ファイルへの直リンクまで塞ぐ——派手ではないが、こうした"届ける側"の作り込みがあって、はじめてAIが作った資料が活きる。電脳技巧集団(AI職人ギルド)が見ているのは、AIで何を作れるかだけではない。作ったものが、最後に相手の手元でちゃんと役立つところまでだ。良いものを作るのと同じくらい、良いものを正しく届ける設計に、職人の仕事はある。

md添付で送る vs 安全なURLで届ける。同じ中身でも、届け方で価値が変わる。
| 観点 | 従来(mdファイルを送る) | セキュア共有ツール(CAG) |
|---|---|---|
| 体裁 | 記号が残る・表が崩れる | AIが整えたHTMLをそのまま表示 |
| 相手の手間 | DLして開き直す | URLをクリックするだけ |
| 見た目の保証 | 相手の環境次第 | PC/スマホで崩れず再現 |
| 安全性 | 渡したら転送し放題 | 推測困難URL+認証+直リンク遮断 |
| 誰が見たか | 分からない | 閲覧ログで把握 |
| 作る手間 | 体裁を手作業で整える | テキストからAIがHTML生成 |
※ 本記事はCAGが開発した社内向けセキュア資料共有ツールの制作事例。組織名・固有の運用情報は伏せた匿名ケーススタディ。設計・技術構成は実装に基づく(v0・2026時点)。
脚注
- 本件は、HTML資料をアップロードすると推測困難な専用URLが発行され、閲覧者は本人確認(マジックリンク/パスワード)を経て、ダウンロードなしでブラウザ上にセキュアに閲覧できる社内向けツール。テキストから生成AIで見栄えの良いHTMLを自動生成する機能も持つ。本文ファイルは非公開ストレージに置き、署名付きの通行証を確認したうえでサーバー経由で配信する。
- マークダウンが「見出し・強調」程度の粗い構造しか表せないのに対し、HTMLは色・余白・配置・表・図など"見た目"そのものを記述できる。生成AI(Claude等)はHTML生成を得意とし、整った提示用資料が欲しい場合はAIにHTMLで出力させる方が、マークダウンを後から整形するより効率的・高品質という指摘がある(AI提供側の実践知見)。本ツールはこの前提に立って設計している。
- 閲覧画面に認証をかけても、本体ファイルのURLが露出して直接取得できては意味がない。そこで本文HTMLは非公開バケットに保管し、直リンクを禁止。認証通過者にのみ暗号署名した使い捨ての閲覧用トークン(httpOnly cookie)を発行し、same-originのプロキシ経由でのみ本文を配信する。サービス用の秘密鍵はサーバー側のみで扱い、クライアントに露出させない。表示は隔離フレーム内で行い、本文に紛れたスクリプト実行を抑止する多層防御。
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