この​サイトの​AIは、​自分たちで​作った​ ──HITL・顧客別メモリ・​メール⇄チャット双方​向を​実装した​顧客対応AIの​中身

CAGサイトの問い合わせに一次対応しているAIは、自分たちで実装した。マルチテナント基盤、RAGと顧客別メモリを持つエージェント、見積もりは人間に渡すHITL設計、メールへの返信がそのままチャットになる双方向統合、そして「全部実機で確かめた」自動検証42項目——本番品質の顧客対応AIを、AI駆動開発で1日で本番稼働に乗せた制作記録。何を作り・どう守り・何をAIに任せないかの設計判断が、速さの主役だ。

甲斐ショウジ甲斐ショウジ
CAG主宰/合同会社ATK CAIO(最高AI責任者)
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制作事例技術このサイトのAIは、自分たちで作った ──HITL・顧客別メモリ・メール⇄チャット双方向を実装した顧客対応AIの中身

制作事例 | AI駆動開発の、動く証拠

このサイトの問い合わせに最初に応えているAI——あれは、外部のチャットツールを貼ったのではなく、自分たちで一から作った顧客対応AIだ。社内コードネーム「御用聞き(goyokiki)」。

以前の記事『脱WordPress』で、私たちは「受注AIの深掘りは別稿で」と書いた。これがその別稿だ。

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中身は、軽いチャットボットではない。マルチテナント基盤、RAGと顧客別メモリを持つAIエージェント、メール⇄チャットの双方向統合、見積もりを人間に渡すHITL設計、そして42項目の自動検証——本番品質でひと通り実装し切った。そしてそれを、AI駆動開発で1日で本番稼働に乗せた。速さの主役は、ツールではなく「何を作り・どう守り・何をAIに任せないか」という設計判断のほうだ。

ただし、これは「AIに丸投げしたら魔法で動いた」という話ではない。むしろ逆だ。どこを自動で任せ、どこを人間が握るかを設計で決め、全部を実機で動かして確かめたから、本番に出せた。その制作の中身を、現場の記録として書く。

ダークテーマの顧客対応ダッシュボード。左にAIが分類・要約した問い合わせの受信トレイ、右にクライアント専用のAIチャットが表示されている
御用聞きの管理画面——左はAIが分類・要約した受信トレイ、右はクライアント専用AIチャット。CAGの「AI一次対応」の実物

01何を、​作ったのか

御用聞きは、問い合わせ受信 → AIが一次対応 → クライアント専用ダッシュボード発行 → 継続発注までを一本で回す、2層ダッシュボード+クライアント専用AIエージェントだ。役割を2つの画面に分けてある。

CAG側(管理ダッシュボード)クライアント側(専用画面)
受信トレイ(AIが分類・要約)自分専用のAIチャット
クライアント発行・ナレッジ管理案件の状況・進捗
要判断キュー(人間が答える待ち行列)再注文・署名つき資料URL・未払い時ロック

※ 全テーブルを組織IDで分離するマルチテナント設計。第1段階=CAG自社運用(=今このサイトで稼働中)、第2段階=課金つきSaaSとして外部提供できる作り。

2層に分けたのには理由がある。CAG側は「複数のクライアントを一望して捌く」ための画面、クライアント側は「自分の案件だけが、自分専用に見える」画面。同じデータを別の見え方で出し分けるには、誰がどこまで見えるかをデータベースのレベルで制御しておく必要がある。後から「権限」を貼るのではなく、最初から組織IDで仕切る——ここを設計の出発点にした。

まずは自分たちで毎日使って、良し悪しを自分の体で確かめる——ドッグフーディングから始めた。売る前に、使い手として痛みも便利さも知っておくためだ。

02メールに​返信すると、​そのまま​AIチャットに​なる

いちばん「動いた瞬間」が気持ちよかったのが、これだ。

クライアントへの通知メールには、返信先(Reply-To)にスレッドを識別するトークンを仕込んだ専用アドレスreply+<トークン>@…)を入れてある。すると——クライアントがそのメールに返信するだけで、本文がそのままチャットに流れ込み、AIが応答する。メール派の相手にも、チャット画面を開かせずに同じ体験を届けられる。

実機テストでは、送信から約10秒で受信トレイに「分類・要約つき」で着弾した。さらに、送信元アドレスと登録アドレスが食い違う"なりすまし"は拒否して、スタッフに警告を上げる。メールという枯れた経路を、AIチャットの入口として安全に使えるようにした。

地味だが、これは効く。BtoBの現場では「専用画面にログインして」より「いつものメールに返信して」のほうが圧倒的に動いてもらいやすい。相手の習慣を変えさせず、こちら側でチャットに変換する——導入のハードルを下げるための、設計の一手だ。チャットからの入力も、メール返信からの入力も、裏では同じ応答パイプラインに合流させてあるので、どちらから来ても応対の質は変わらない。

左にメールの返信画面、矢印を挟んで右にAIチャット画面。メールに書いた返信内容がそのままチャットの吹き出しとして着弾し、AIが応答している2画面のモック
メールに返信(左)→ その本文がそのままチャットに着弾し、AIが応答(右)。枯れたメールを、AIチャットの入口に

03いちばん​大事な​設計:AIに、​値決めを​させない

御用聞きの心臓部は、派手な機能ではなく「AIに何をさせないか」の線引きだ。

たとえばクライアントが「これ、見積もりいくら?」と聞いたとする。普通のチャットAIなら、それっぽい金額を即答してしまう。御用聞きは違う。エージェントは即答せず「担当者に確認します」と保留し、その問い合わせを要判断キューに起票する。人間(CAGの職人)が回答を書くと、エージェントがその回答を代理で送る

クライアントの質問チャット or メール返信 AIが分類通常 ⇔ 重要判断 通常 → AIが即応答(24時間)RAG+専用メモリ 重要 → 即答せず「確認します」要判断キューに起票→ 人間が回答 → AIが代理送信
分類して、通常はAIが即応答/値決め等の重要判断は保留→要判断キュー→人間が回答→AIが代理送信(HITL)

これが、CLAUDE.mdにも掲げているCAGの運用原則——HITL(Human-in-the-Loop/重要判断は人間が承認)——の実装だ。値決め・約束・込み入った折衝のような「外したら信頼を失う判断」は、AIに渡さない。速くて24時間動くAIの一次対応と、人間が責任を持つ最終判断を、設計のレベルで分けてある。

「AIが全部やります」ではなく「AIが一次対応するから速い・24時間・その分安い。複雑な判断は職人が引き継ぐ」——この正直さが、CAGがAIを売る上での核だ。

もうひとつ、通常応答の質を支えているのが顧客ごとの「専用メモリ」だ。エージェントは、そのクライアントのナレッジ(過去のやり取り・案件情報・FAQ)を検索して引き当てたうえで答える(RAG)。日本語の表記ゆれにも当たるよう、意味の近さ(ベクトル検索)と語の一致(全文検索)を混ぜたハイブリッド検索にしてある。会話が長くなれば古い文脈を要約して圧縮し、相手の文脈を見失わない。CAGが掲げる「顧客ごとに分離し、常に更新される専用メモリ」を、汎用チャットボットではなく一社ずつの担当AIとして実装した部分だ。

041日の​タイムライン:検証で​固めながら、​本番品質へ

「1日で本番」を、工程で分解するとこうなる。各フェーズの最後に必ず実機・自動テストで検証してから次へ進んだ。

フェーズ作ったもの検証
0基盤(Next.js+エラー監視+計測)監視のテストエラー捕捉を確認
115テーブル+アクセス制御+ベクトル検索アクセス制御 22/22 通過・警告0
2マジックリンク認証本番ログインを実機通し
3公開フォーム+メール受信→AI分類メール経路 9/9 通過
4管理ダッシュボード(受信トレイ/発行/ナレッジ/要判断)ビルド+実機
5エージェント(RAG+専用メモリ+会話圧縮+HITL)エージェント 11/11 通過
6クライアント画面(チャット/案件/再注文/署名URL/未払いロック)同上

※ 約60ファイル/マイグレーション4本/1日(2026-06-11)。

人間が握ったのは、アーキテクチャ/セキュリティ境界/HITLの線引き/各フェーズの検証基準という"設計の判断"だ。実装はAI駆動で高速に回し、1日で本番品質に到達させた。フルAI駆動とは「人が何もしない」ことではない。人は設計と検証に集中し、実装の速度をAIで何倍にもする——その実物がこれだ。

05​「動くはず」を​信じない​:自動検証42項目

CAGが大事にしているのは、「テストが通った」より「実機で動かして確かめた」だ。御用聞きでは、リポジトリに3本の検証スクリプトを資産として残し、合計42項目を自動で通している。

アクセス制御22別クライアント遮断/なりすまし拒否 エージェント11RAG参照/保留起票/停止/メモリ抽出 メール経路9受信→分類→返信→なりすまし照合 合計 42 項目 — いつでも再実行できる形でリポに常駐
3本の検証スクリプトで計42項目を自動実証(全通過・2026-06-11時点)。一度きりでなく、いつでも再実行できる
  • アクセス制御 22項目:別のクライアントのデータを覗けないか/なりすまし投稿できないか/匿名で入れないか——全パターンがちゃんと拒否されることを自動実証
  • エージェント 11項目:専用ナレッジを正しく参照するか/見積もりは保留&起票するか/停止中は黙るか/会話からメモリを抽出するか
  • メール経路 9項目:受信→分類→受信トレイ→返信→なりすまし照合→チャット→AI応答→通知、の一連が通るか

これらは一度きりの確認ではなく、いつでも再実行できる形でリポに残っている。「動いて見える」状態を信用せず、壊れていないことを機械で繰り返し確かめられる——これがCAGの透明性の中身だ。

06AIが​自分で​踏んで、​自分で​直した​罠​(技術メモ)

フルAI駆動でも、当然ハマる。むしろAIで作るからこそ出る罠もある。記録として、効いたものを3つ残す。

症状効いた対策
LLMはJSON指定を破る「JSONだけで」と言っても後ろに解説文 → フェンス除去だけの解析が失敗 → 「安全側=全部エスカレ」に静かに誤爆最初の { から括弧対応で抜き出すパーサに変更。温度0でも後置は止まらない前提で組む
設定ツールがenvを上書き連携追加コマンドの裏で .env.local が再生成され全キー消失エディタのバージョン履歴から復元。以降は実行前に必ずバックアップ
非同期基盤の署名検証デプロイ後に受信処理が 401 で弾かれるエンドポイントへ再同期リクエスト一発で解消(同期前着信は戻らない=設計で許容)

※ いずれも開発中に実際に踏み、その場で修正した事象。

共通する教訓は、CAGがずっと書いてきたことと同じ——「AIが"できました"と言っても、実機で確かめるまで信じない」。静かに失敗する経路(サイレント・フェイル)を、テストと観測で表に引きずり出す。

07​締め:自社で、​いちばん​最初に​使う

なぜ、外販より先に自社で使うのか。自分たちの顧客対応で毎日使えば、良し悪しが自分の体で分かるからだ。速い一次対応はどこまで効くのか、HITLの線引きはこれで適切か、メール返信の体験は本当に滑らかか——売る前に、使い手として痛みも便利さも知っておく。

御用聞きは、CAGの主張「AIが一次対応するから、速い・24時間・その分安い。複雑な判断は人間(職人)が引き継ぐ」を、スローガンでなく動くプロダクトにしたものだ。そしてその制作過程そのものが、「設計を決めてAIに任せ、全部実機で確かめる」というCAGのものづくりの、いちばん正直な証拠になっている。

ウェブサイト上のチャットウィジェットでAIがクライアントに一次対応している手前の画面と、その奥でスタッフが要判断キューを確認しているデスクの様子。AIと人の二層が一目で分かる構図
サイト上ではAIが一次対応し、その奥で人間が要判断キューを確認する——AIと人の二層が、止まらない応対を作る

このサイトで御用聞きに話しかけると、その思想がそのまま体験できる。気になったことを、まず聞いてみてほしい。

問い合わせ対応を、「速い・24時間・その分安い」へ。従来の応対と、御用聞きを一枚に。

観点よくある問い合わせ対応御用聞き(CAGの顧客対応AI)
一次対応人手・営業時間内・属人的AIが即時・24時間
メール派の相手別系統で分断返信がそのままチャットに(双方向統合)
見積もり・重要判断担当者待ちで停滞 or 即答で事故AIは保留→要判断キュー→人間が承認(HITL)
データ分離後付けで不安設計時からマルチテナント+アクセス制御実証
品質の確かめ方「動いてるはず」実機で42項目を自動検証・再実行可能
コスト人月で膨らむAI一次対応で圧縮・複雑判断のみ人

※ 本記事はCAG自社プロダクト「御用聞き(goyokiki)」の制作記録。クライアントの実データは扱っておらず(検証は全てテストデータ)、リポジトリは非公開。掲載は仕組みの説明に必要な範囲にとどめる(v0・2026-06時点)。

脚注・出典

  1. 本記事はCAG自社プロダクト「御用聞き(goyokiki)」の制作記録。クライアントの実データは扱っておらず(検証は全てテストデータ)、リポジトリは非公開。掲載は仕組みの説明に必要な範囲にとどめる。
  2. 技術スタック:Next.js/Supabase(認証・DB・ベクトル検索・ストレージ)/Resend(メール送受信)/非同期ジョブ基盤/Claude(Sonnet+Haiku)/埋め込みモデル/エラー監視。いずれも一般に公開されている技術の組み合わせ。
  3. 「アクセス制御22/エージェント11/メール9=計42項目」は、リポジトリ内の検証スクリプトで自動実行・全通過を確認した自社計測値(2026-06-11時点・v0)。本番稼働後も再実行できる形で保守している。

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