Recursiveが2026年10月21日に公開した「Flint」は、手元の機器で動かす開発向けAIです。コードを読み、修正案を作り、テストを書くといった仕事を想定しています。対象チップとメモリの条件を満たすMacでは、公式ツール「rec」から利用する構成が案内されています。[1]
注目したいのは、開発作業を任せるAIを、自社側で動かす選択肢が増えたことです。この記事では2026-10-26時点の公式資料をもとに、必要機材、公表性能の読み方、クラウドAIとの使い分けを整理します。モデルの実行、日本語での品質、速度、使用メモリはCAGでは検証していません。

01 Flintが想定するのは、コードを調べて直す仕事
Flintは、プログラムの調査、バグ修正、機能の実装、テスト作成を想定した言語モデルです。文章で説明するだけでなく、外部の道具を呼び出し、その結果を受けて次の作業を進める「ツール利用」に対応します。ファイルを編集したりテストを実行したりするには、モデルと道具をつなぐ開発用ソフトも組み合わせます。[2]
| 項目 | 公式資料に書かれている内容 |
|---|---|
| 提供元 | Recursive |
| 主な用途 | コードの調査、バグ修正、機能実装、テスト作成 |
| 入出力 | テキスト。画像・音声を入力するモデルとしては案内されていない |
| モデルの規模 | 総パラメータ39.8B(約398億)。文章の処理単位である1トークンあたり、約2.5B(約25億)が稼働 |
| 利用ライセンス | モデルの重みはApache 2.0。外部サービスの利用条件は別途確認 |
パラメータは、AIが学習で得た数値の集まりです。Flintは、質問に応じて一部の専門部分を働かせるMoEという仕組みを使います。計算に使う部分を絞る設計ですが、約2.5Bが稼働することと、モデル全体が小さなメモリに収まることは別です。モデルのファイル、処理中の記憶、ほかのアプリが使う分まで含めて機材を選びます。[2][3]
経営者や事業責任者にとっての用途は、「AIを一つ導入する」より具体的です。社内ツールの小さな修正、既存の処理の説明、変更時のテスト追加など、開発担当者が結果を確かめられる仕事から検討できます。
02 Macで使うときは、モデルと実行ツールをセットで選ぶ
公式の「rec」は、Flintを動かす処理系と、開発作業を進めるPiやOpenCodeの接続をまとめるツールです。モデルを取得し、手元のサーバーを起動して、開発用ソフトにつなぐところまでを案内します。[4]
2026-10-26時点で、recのMac向け条件は次のとおりです。「Apple Siliconならどれでも対象」という条件ではありません。[4]
| 確認項目 | recのMac向け条件・挙動 |
|---|---|
| チップ | M4 Pro、M5 Pro、M5 Max |
| メモリ | ユニファイドメモリ48GB以上 |
| 保存容量 | モデルと実行環境のために、約30GBの空き容量 |
| 開発用ソフトの起動 | Node.js 22とnpmを利用 |
| 同時実行 | 生成は一度に1件。重なるリクエストはHTTP 429になる場合がある |
対象外のチップや48GB未満のMacでは、recはモデルのダウンロードを開始しないと公式資料にあります。また、recのNVIDIA RTX Spark対応は「近日予定」です。Flint自体の公表性能にRTX Sparkの数字が載っていても、その数字を、現在のrecで同じ構成を導入できる証拠にはできません。[4]
別の経路として、Ollama、LM Studio、llama.cppなども案内されています。ただし、使うモデルファイルと対応する実行環境の版をそろえる必要があります。Hugging FaceにあるBF16版(重みを16ビットで表す形式)は約80GBの配布で、recが管理するMac向けモデルとは区別します。ダウンロード容量だけを、実行時の必要メモリと読み替えないことも大切です。[2][3]
長い資料を一度に扱う上限にも、資料間の違いがあります。公式発表は最大512kトークン、推奨256kと説明する一方、モデルカードと公開設定ファイルは262,144トークンを記載しています。ここを同じ条件だと決めつけず、実際に選ぶモデルと実行環境の設定を確認します。[1][2][5]
03 公表された速度と、開発の完了までにかかる時間
Recursiveは、M4 Pro搭載MacBook Proで毎秒125トークン超の生成速度を公表しています。これは提供元の測定です。公式の比較には入力の読み込み処理を除く条件があり、操作してから最初の返答が届くまでの待ち時間や、修正が完了するまでの総時間とは分けて読む必要があります。[1][6]
開発タスクの評価として、モデルカードには次の値が掲載されています。いずれもFlint側の公表値で、CAGによる再現結果ではありません。[2]
| 評価 | 公表値 | 何を見るための評価か |
|---|---|---|
| Terminal-Bench 2.1 | 54.9% | ターミナルを使う作業 |
| SWE-bench Pro v2 | 89.7% | ソフトウェアの修正課題 |
| SWE-bench Verified | 74.2% | 検証済みのソフトウェア修正課題 |
評価ごとに課題や道具の構成が違うため、数字の大小をそのまま難易度の比較には使えません。モデルカードは、Terminal-BenchではWeb検索で得た解答を成功に数えないなど、比較相手と条件が異なる点も説明しています。社内の修正作業が同じ成功率になる、という数字ではありません。[2]
導入判断では、生成の速さに加えて、指示の出し直し、テストの待ち時間、人間による修正確認までを見ます。日本語の指示、社内独自の命名、既存システムの癖にどこまで対応できるかは、自社の小さな課題で確かめる項目です。
04 ローカルとクラウドは、費用と運用の持ち方で比べる
Flintの重み、つまり学習結果を収めたファイルはApache 2.0で公開され、公式のrecもApache 2.0です。クラウドで呼び出すサービスの契約や、データの取り扱い条件は、モデルのライセンスとは分けて確認します。[2][8]
| 観点 | 自社側で動かす構成 | 外部のクラウドを使う構成 |
|---|---|---|
| 用意するもの | 対応機材、モデル、実行環境、保守担当 | 接続先、利用契約、利用量の管理 |
| 費用を見る単位 | 機材、電力、更新・運用の手間 | サービスごとの料金と利用条件 |
| データの扱い | モデル以外の検索・ログ・道具の通信も確認 | 送信範囲、保存、権限、契約を確認 |
| 並行作業 | 今回のrecは生成1件ずつという条件 | 接続先の同時実行・制限を確認 |
公式ドキュメントは、クラウド経路としてOpenCodeやOpenRouterを案内しています。一方、Recursiveの直接APIは選定されたパートナー向けです。モデルが公開されていることを、誰でも直接APIの契約を開始できるという意味には広げません。[7]
ローカル推論は、コードを自社の機器で処理する構成を作れます。ただし、開発用ソフトが検索や外部サービスを使う場合、その通信まで自動的になくなるわけではありません。扱うコード、接続する道具、作業記録を保存する場所を、ひとつの構成として決めます。
用途が決まった小さな修正をローカル側で試し、より複雑な設計や大量の並行作業は別の環境も含めて比較する。どちらかに全部を寄せる前に、同じ課題で、品質・完了時間・確認の手間を比べる進め方が現実的です。
05 最初は、一つの変更を最後まで確認する
CAGの導入設計としては、元に戻せる小さなリポジトリのコピーを用意し、「説明→テスト追加→修正→差分確認」の一連の流れを試すことを勧めます。モデルが文章で完了を報告しただけでは、ファイルが正しく変わったか、テストが適切かは判断できません。
たとえば、CSVを取り込む社内ツールなら、空欄をどう扱うかという一つの仕様に絞れます。次は試し方を示す設計例で、Flintの実行結果ではありません。
CSVの金額欄が空の行を読み込んだとき、今の処理がどう動くか説明してください。期待する扱いを確認してから、その条件で失敗を検出するテストを追加し、必要な修正案を示してください。適用前に差分とテスト結果を確認できる形にしてください。
導入担当者が持ち帰る確認項目は、次の五つです。
- 対応チップ、メモリ、保存容量が、選んだ実行環境の条件を満たすか。
- モデルの版、実行環境の版、扱う文脈の長さを記録したか。
- 読ませるファイル、実行してよい道具、変更を適用する権限を絞ったか。
- 正常な例だけでなく、失敗させる入力でもテストが検出できるか。
- 差分、テストの実出力、人間の確認まで含めて、完了を判断できるか。
Flintを選ぶ意味は、開発AIを自社の機器と仕事の条件に合わせて組み立てられることです。必要機材が合うなら、まず一つの変更を最後まで追い、クラウドのAIと同じ課題で比べる。その結果から、任せる範囲を広げていけます。

出典・確認範囲
- Recursive「Introducing Flint」。発表日は同社Updatesの2026-10-21表記で確認。用途、M4 Proの公表速度、比較条件、最大512k・推奨256kの説明。速度や性能は提供元の公表値。
- Recursive「Flintモデルカード」。用途、入出力、39.8B/約2.5B、評価値と条件、BF16配布、262,144の文脈設定、制約、Apache 2.0を確認。2026-10-26取得。
- Recursive「Choose your setup」。モデル形式と処理系の対応、KVキャッシュなどの実行時メモリ、GGUFとrec管理モデルの区別を確認。
- Recursive「recドキュメント」。対象チップ、48GB以上、空き容量約30GB、Node.js 22、生成1件ずつ、対象外機器の取得制限、RTX Spark対応予定を確認。2026-10-26時点。
- Recursive「Flint公開設定ファイル」。max_position_embeddings=262144。発表ページの最大値と同一の実行条件だとは扱っていない。
- Recursive「rec README」。単一セッション向けの位置づけと、比較図の条件(M4 Pro 48GB、4ビット、入力1K〜252K、各条件5回、入力処理を除外)を確認。この記事にCAGの速度実測は含まない。
- Recursive「Release resources」。OpenCode/OpenRouterへの案内、直接APIのパートナー向け提供を確認。接続先の料金・保存条件は各サービスの条件による。
- Recursive「rec LICENSE」。実行ツールのApache License 2.0を確認。モデル側のライセンスはモデルカードも参照。









