NVIDIAが2026年10月23日、端末内で動かす会話AI「Nemotron 3.5 Bolt E4B 4GB」を公開しました。[1] 注目点は、会話しながらアプリの機能を呼び出すAIを、手元の機器に組み込めることです。 ただし、「4GB」は配布ファイルの容量でも、あらゆる条件でのメモリ上限でもありません。 2026-10-25時点の公式資料をもとに、使い道、機器ごとの実測、導入前に確かめたい条件を整理します。

01 会話と操作をつなぐ、小型の言語モデル
Nemotron 3.5 Bolt E4Bは、GoogleのGemma 4 E4BをもとにNVIDIAが追加学習した言語モデルです。10月15日のシリーズ発表で予告され、10月23日にモデルの重み、つまりAIの学習結果を収めたファイルが提供されました。クラウドのチャットサービスに登録する方式とは違い、自分たちで実行環境を用意する選択肢です。[2]
狙いは、端末の操作案内、対話するキャラクター、機器に組み込むアシスタントなど。質問に文章で答えるだけでなく、会話の途中でアプリの機能を呼ぶ「ツール利用」に対応します。たとえば在庫を尋ねられたら在庫検索を呼び、その結果に基づいて返答する、といった組み込み方です。在庫検索そのものや、実行を許可する仕組みは開発側が用意します。
| 項目 | 公式仕様と読み方 |
|---|---|
| モデル規模 | 総パラメーター数は80億、実効40億。E4Bを「全体で40億」とは読まない |
| 配布形式 | GGUF形式のQ4_K_M版。数値の表現を圧縮した量子化モデル |
| 入出力 | テキストを受け取り、テキストを返す |
| 文脈の長さ | 最大64Kトークン。会話履歴や指示、検索結果も枠を使う |
| 日本語 | 対応言語に含まれる。業務上の品質は別途評価する |
| 応答の調整 | 推論の有効・無効と、簡潔な会話向けモードを設定できる |
| 利用条件 | OpenMDW-1.1。再配布時などの条件は原文を確認する |
仕様表の出典はNVIDIAのモデルカードです。トークンはAIが文章を扱う単位で、日本語の文字数と一対一には対応しません。上限までの文脈を確保した場合の速度やメモリが、短い会話と同じになるわけでもありません。[3]
02 「4GB」は何を指すのか
保存容量、実行時のメモリ、機器全体のメモリは分けて考える必要があります。2026-10-25時点の公式配布情報では、GGUF本体は6,180,446,208バイト、十進表記で約6.18GBです。名前を見て「4GBだけダウンロードすればよい」と考えると、準備する容量から食い違います。[4]
NVIDIAは対象の処理で約4GBのメモリ使用を目指すモデルと説明しています。一方、公開された実測表では、会話の条件や機器によって4GBを超えています。下表はその一部です。最初の文字が出るまでの時間をTTFTと呼びます。
| 機器・会話の条件 | VRAM使用量 | 最初の文字まで | 生成速度 |
|---|---|---|---|
| RTX 5070・履歴キャッシュなし/入力3K/出力50 | 3.5GB | 548ms | 毎秒133.4トークン |
| RTX 5070・履歴キャッシュ32K/入力2K/出力256 | 4.3GB | 1,238ms | 毎秒106.2トークン |
| Jetson Orin Nano 8GB・履歴キャッシュなし/入力3K/出力50 | 4.2GB | 5,785ms | 毎秒15.5トークン |
| Jetson Orin Nano 8GB・履歴キャッシュ32K/入力2K/出力256 | 4.9GB | 6,259ms | 毎秒13.0トークン |
出典はNVIDIAの実測で、CAGの実測値ではありません。表の使用量は、公式が「VRAM usage」として掲載した値です。VRAMはGPUの処理に使うメモリを指し、ここではOSや併用アプリを含む端末全体の必要メモリを示しているわけではありません。いずれもQ4_K_M、同時処理数1、llama.cppのCUDA実装、AIPerfによる測定です。履歴キャッシュ・新たな入力・出力の長さを変えた条件であり、64K全体を使った結果ではありません。RTX 5070は12GB搭載機です。この表から「4GB搭載のGPUでも同じ結果になる」とは判断できません。[1]
会話履歴を保持する領域は、モデル本体とは別に実行条件へ影響します。音声認識や読み上げ、検索処理、既存の業務アプリも一緒に動かすなら、それらの使用量を含めて見積もります。llama.cpp側にも文脈や同時処理数の設定があるため、モデル名だけで必要メモリを決めないことが大切です。[5]
また、公式の品質比較にはBF16版と量子化版の区別があります。BF16はより高い精度で数値を持つ形式です。別形式での品質スコアを、そのまま4GB版の実行速度と並べて優劣を決めるのは避けたいところです。
03 音声アシスタントの「会話を考える部分」になる
公式紹介には音声アシスタントという用途が出てきますが、このモデル自体の入出力はテキストです。マイクの音声を文字にする処理、返答を声にする処理は、システムの別の部分として組み合わせます。画像を見て状況を把握させたい場合も、別の認識モデルなどが必要です。[3]
| 使い道の例 | Bolt E4Bに任せる部分 | 別に用意する部分 |
|---|---|---|
| 店舗端末の操作案内 | 質問を整理し、操作候補を短く返す | 操作マニュアルの検索、画面との接続 |
| 音声で使う作業補助 | 文字になった依頼を読み、返答や操作を選ぶ | 音声認識、読み上げ、マイクなどの機器 |
| 在庫照会のアシスタント | 検索機能を選び、返った結果を説明する | 在庫データ、アクセス権限、検索機能 |
この表はCAGが考える利用例で、導入実績ではありません。「会話が自然」と「操作が正しい」は別々に確認します。存在しない在庫を答えないか、曖昧な商品名なら聞き返すか、検索が失敗した時に成功したように話さないか。日常の会話が滑らかでも、ここが崩れると業務では使いづらくなります。
モデルカードには、推論を切り替える設定と、短く話す会話向けの設定が用意されています。複雑な判断と短い案内で設定を変える余地はありますが、日本語の敬語、商品名の読み違い、応答が終わるまでの時間は、実際の利用条件で比べる必要があります。[3]
04 ローカル実行で変わること、残る仕事
端末内で実行する利点は、モデルへの入力を外部の推論サービスへ送らずに処理する構成を選べることです。ただし、外部通信の範囲はシステム全体で決まります。モデルがローカルでも、音声認識がクラウドだったり、検索先が外部APIだったりすれば、その部分では通信が発生します。
NVIDIAが公開したメモリ・速度の測定環境は、NVIDIA機器とCUDAによるものです。モデルカードにはllama.cppでの起動例があり、補助モデルを使うDFlashの構成も分かれています。まず本体だけの構成で条件を揃え、補助モデルや別の認識モデルを加えた時は、必要量を測り直すのが分かりやすい進め方です。Macなど別の環境での速度を、NVIDIAの数値から推定することはできません。[1][3]
業務で試すなら、最初は公開資料や架空の在庫データを使います。ネットワークを切っても必要な処理が完結するか、通信ログに意図しない送信先がないか、履歴やログがどこに残るかを確認します。これはCAGの試し方の提案であり、本記事でオフライン動作を検証したという意味ではありません。
NVIDIAのプライバシー資料は学習データに関する説明を含みますが、それだけで導入先のアプリによるログ保存や外部送信まで保証されるわけではありません。利用時のデータの流れは、自分たちの構成として確認する必要があります。[6]
ローカルに移せば運用費がゼロになるわけでもありません。機器の購入、電力、更新、障害対応、品質確認は残ります。頻繁に使う定型処理なのか、まれに使う高度な分析なのかを分け、クラウド利用時の費用と管理の手間を含めて比較します。

05 最初の検証は、短い一つの仕事から
導入の判断には、モデル全体のランキングよりも、自分たちの仕事で失敗する条件が役立ちます。たとえば「架空の商品在庫を調べ、根拠付きで短く回答する」という一つの仕事に絞り、次の観点を残します。
| 確認すること | 試す条件と記録 |
|---|---|
| 回答と操作の正しさ | 正しい商品、不明な商品、検索の失敗を混ぜる。勝手に事実を補わないか記録 |
| 日本語と応答時間 | 同じ依頼で初回・会話の継続時を分ける。最初の文字と回答完了の両方を計測 |
| メモリの余裕 | 短い履歴と長い履歴を比べ、音声処理などを併用した時の最大使用量も記録 |
| 通信と権限 | 必要な接続先、保存されるログ、実行できる操作を確認。更新や削除は人の承認を挟む |
成功例だけで判断せず、わざと存在しない商品を尋ねたり、検索を失敗させたりして、止まる・聞き返す・失敗を伝える動作まで確かめます。NVIDIAも用途ごとのデータを用いた追加検証の必要性を示しており、公開モデルを置くだけで業務システムが完成するわけではありません。[7]
利用条件はOpenMDW-1.1です。ライセンス原文は幅広い利用を認める一方、モデル素材を再配布する際のライセンスや由来表示の保持などを求めています。2026-10-25時点の原文を、組み込み・配布の形に合わせて確認してください。[8]
Bolt E4Bは、短い会話と限定した操作を手元の端末で回したい時の候補です。まずは小さな仕事を一つ選び、機器・履歴の長さ・接続先を固定して比べる。「4GB」という名前より、その条件で正しく動くかを採用の基準にできます。
本記事は2026-10-25時点の公式情報の解説です。CAGではモデルの実行、日本語精度、応答速度、実際のメモリ使用量、オフライン動作を検証していません。
出典・確認範囲
- NVIDIA技術ブログ:Nemotron 3.5 Bolt E4B 4GB(2026-10-23公開、2026-10-25確認)。提供開始、用途、機器別の測定条件と結果。性能値はNVIDIA測定でありCAG未実測。
- NVIDIA:Nemotron 3.5シリーズの発表(2026-10-15公開、2026-10-25確認)。E4Bは10月23日提供予定として予告。
- NVIDIA公式モデルカード(2026-10-25確認)。規模、形式、入出力、文脈長、日本語、起動例、会話と推論の設定。
- Hugging Face公式リポジトリの配布情報(2026-10-25確認)。HF APIでGGUF本体6,180,446,208バイトを取得。補助モデルや関連ファイルは含まない。
- llama.cpp公式サーバー資料(2026-10-25確認)。文脈長、同時処理、KVキャッシュなどの実行設定。
- NVIDIA公式プライバシー資料(2026-10-25確認)。学習段階の説明と、導入先の通信・ログ設計は区別する。
- NVIDIA公式安全性資料およびモデルカード(2026-10-25確認)。用途ごとの検証と安全性評価。本記事の検証手順はCAGの提案。
- OpenMDW License Agreement 1.1(2026-10-25確認)。再配布時のライセンス・由来表示の保持等。契約条件の詳細は原文を参照。









