Gemini​「Managed Agents」が​無料で​使えるように​ ──定時実行・サンドボックス・トークン上限を​備えた​"常駐型AIエージェント"を​解説

GoogleのGemini API「Managed Agents」が無料ティアに開放され、cronによる定時実行とトークン上限(max_total_tokens)が加わった。サーバーを持たずに"決まった時間に働き、予算で止まる"AIエージェントを1つのAPIで動かせる。仕組みと使う前の注意を解説する。

甲斐ショウジ甲斐ショウジ
CAG主宰/合同会社ATK CAIO(最高AI責任者)
技術9分で読めます
技術Gemini「Managed Agents」が無料で使えるように ──定時実行・サンドボックス・トークン上限を備えた"常駐型AIエージェント"を解説

GoogleがGemini APIの「Managed Agents(マネージドエージェント)」を無料ティアに開放しました。あわせて、cron(クーロン=決まった時刻に処理を自動実行する仕組み)によるスケジュール実行と、トークン上限による予算制御(max_total_tokens)が加わっています[3][4]

つまり——自前のサーバーを1台も持たずに、「毎朝9時に働き始めて、決めた予算を使い切ったら安全に止まる」AIエージェントを、API呼び出し1つで持てるようになりました。

この記事で分かること——①Managed Agentsとは何か ②「常駐」を実現する定時実行の仕組み ③暴走を防ぐ予算制御と料金の目安 ④使う前の注意。数値はすべてGoogle公式ドキュメント・公式ブログベースです。

ダークな管制画面。中央にサンドボックス内で作業するエージェント、左に朝9時を指すスケジュール、右にトークン予算メーター
定時に起きて、サンドボックスで働き、予算で止まる。「常駐エージェント」の部品がAPI標準で揃った。

01何が​起きた​ ──2ヶ月で​「常駐の​部品」が​揃った

Managed Agentsは2026年5月19日に公開プレビューとして登場し、この2ヶ月で立て続けに拡張されてきました[1][2]

時期更新何ができるようになったか
5月19日公開プレビュー開始API 1呼び出しで、サンドボックス内のエージェントが動く
7月7日バックグラウンド実行・リモートMCP接続長時間タスクを裏で回せる/社内データベースや内部APIに接続できる
7月中旬無料ティア開放・cronトリガー・max_total_tokens無料で試せる/定時に自動起動する/予算で安全に止まる

注目したいのは最後の3点セットです。「定時に起きる」「勝手に使いすぎない」「無料で試せる」——常駐型エージェントを業務に置こうとしたとき最初に困る3つが、API標準機能として一度に揃いました。

3段階で積み上がった「常駐エージェント」の部品 5/19 公開プレビュー Linuxサンドボックスで 自律実行(推論・コード・Web) 7/7 接続の拡張 バックグラウンド実行 リモートMCP=社内データ接続 7月中旬 運用の3点 無料ティア・cron定時実行 トークン予算で安全停止 動く → 繋がる → 運用できる(デモから業務へ) 2026年5月 → 7月(いずれもGoogle公式発表・ドキュメントベース)
5月「動く」、7月頭「繋がる」、7月中旬「運用できる」。3段目が今回の主役。

02Managed Agentsとは​ ──API 1回で​Linuxの​"作業部​屋"が​立つ

Managed Agentsは、GoogleがホストするセキュアなLinuxサンドボックス(外部から隔離された作業環境)の中でAIエージェントを動かす仕組みです。1回のAPI呼び出しで作業部屋が用意され、その中でAIが推論し、コードを書いて実行し、ファイルを管理し、Webを閲覧します[3]

中身は「Antigravity agent」と呼ばれる汎用エージェントで、動力はGemini 3.5 Flashです。Googleのコーディング環境「Antigravity IDE」と同じハーネス(エージェントの実行基盤)を使っています。

項目仕様(公式ドキュメントより)
実行環境Ubuntuベース・Python 3.12・Node.js 22
できること推論・コード実行・ファイル管理・Web閲覧
ネットワーク既定は外部通信可。許可リスト(allowlist)で制限可能
ファイル環境が保持される限り永続化
環境の寿命非アクティブ7日で完全削除
モデルGemini 3.5 Flash(antigravity-preview-05-2026)
ダークなモニタリング画面のUIモック。サンドボックス内のエージェントがコード実行・ファイル操作・Web閲覧を進めるログが流れる
サンドボックスの中でエージェントが自走する。環境の構築も保守もGoogle側。

ポイントは「自社でサーバーやDocker環境を整備しなくていい」ことです。これまで常駐エージェントを持とうとすると、実行環境の構築・保守がまず壁でした。その壁ごとGoogleが預かる形です。

03定時実行​(cronトリガー)​ ──外部​サーバーなしの​「常駐」が​できた

今回の目玉がネイティブcronトリガーです。「毎朝9時」「平日だけ」のようなスケジュールをAPIに登録しておくと、外部のサーバーやスケジューラを一切用意せずに、エージェントが決まった時刻に自動で動き始めます[3]

# 平日の朝9時に、決めておいた仕事を自動で始める
schedule="0 9 * * 1-5", time_zone="Asia/Tokyo"

運用に必要な操作も一通り揃っています。

操作何ができるか
一時停止/再開スケジュールを止める・戻す(status を paused / active に)
即時実行スケジュールを待たずに手動で走らせる
実行履歴いつ動いて何をしたかを一覧で確認

これまで「毎朝レポートをまとめるAI」「毎晩データを点検するAI」を作るには、cronを回すサーバーを自前で立てるか、外部の自動化サービスを噛ませる必要がありました。それがGemini APIの中で完結します。

「毎朝9時に働くAI」の1日(サーバー不要) 09:00 cronが起こす サンドボックスで作業 データ取得 → 集計 → 検証 ファイルは部屋に残る (予算内で・後述) 成果物 朝会前にレポート完成 終わったら眠り、翌朝また cron が起こす 一時停止・即時実行・履歴確認もAPIから
起きる→働く→残す→眠る。スケジューラも常駐サーバーも自前で持たない。

04予算制御​(max_total_tokens)​ ──「使い​切ったら​止まる」が​標準機能に

もう1つの目玉が予算制御です。エージェントは1回の実行で通常10万〜300万トークンを消費します(公式目安)[3]。放っておくと、ループにはまったエージェントが延々とトークンを燃やし続ける——これが常駐化の最大の不安でした。

max_total_tokensは、1回の実行に使えるトークン総量(入力+出力+思考)の上限をあらかじめ決める仕組みです。上限に達すると実行は incomplete(未完了)の状態で安全に停止し、作業内容はサンドボックスに残ります。続きは、新しい予算を渡して中断地点から再開できます。

予算で止まり、予算で再開する 実行中:トークン消費が積み上がる 上限(max_total_tokens) status: incomplete 壊れず・安全に停止 作業ファイルはサンドボックスに残る 新しい予算を渡して、中断地点から再開 「暴走したら」でなく「上限を先に決める」 キャッシュ済みトークン(約50〜70%が対象)は上限にカウントされない
止まり方が壊れ方でなく「未完了」なのが肝。予算は使い切っても作業は失われない。

料金の公式目安も公開されています。プレビュー期間中はサンドボックスの計算資源(CPU・メモリ)は課金対象外で、課金はGeminiモデルのトークンとツール使用分です。

タスクの種類目安コスト(公式)
調査・情報整理$0.30〜$1.00
文書生成$0.30〜$1.30
データ処理$0.70〜$3.25
複雑なワークフロー300万〜500万トークン・〜$5程度

以前の記事で「AIエージェントの原価は月額でなくトークンで決まる。読ませる前に予算ゲートを設計する」と書きました。その予算ゲートが、APIの標準機能として提供され始めた——今回の更新はそう位置づけられます。

AIエージェントのトークン経済の記事サムネイル 関連記事 | 予算ゲートの設計論AIを全社に入れたら、今度は「使いすぎ」に悩み始めた ──AIエージェント時代の本当のコストは、月額ではなくトークンで決まる

05使う​前の​注意 ──プレビューの​"境界"を​知っておく

便利さの一方で、公式ドキュメントには運用上の注意も書かれています。導入を検討するなら次の5点は押さえておきたいところです。

① プレビュー段階である。仕様も価格も変わりえます。試すのは今からで良いとして、本番の基幹業務に据えるのは早い段階です。

② 上限は「最善努力」である。max_total_tokensのチェックは作業ステップの区切りで行われるため、多少の超過はありうると公式が明記しています。1円単位の厳密な上限ではなく「暴走を止める安全弁」と捉えるのが正確です。

③ 環境は7日で消える。非アクティブが7日続くとサンドボックスの中身は完全削除されます。残したい成果物は外部ストレージに出す設計が前提です。

④ ネットワークは既定で開いている。外部通信は許可リストで絞れます。業務データを扱うなら「絞ってから使う」が順序です。

⑤ 止める手段と、止める設計は別物。定時実行・予算停止・一時停止と「止める手段」は揃いましたが、どの操作に人の承認を挟むか(HITL=人間による最終判断)は、利用者側の設計課題のまま残ります。

ダークな設定画面のUIモック。ネットワーク許可リスト、トークン予算の上限、人間の承認を求めるゲートの3つの設定パネル
許可リスト・予算・承認ゲート。「任せる範囲」を先に決めてから走らせる。

私たちも受託開発で常駐型のエージェントを組みますが、最初に決めるのはモデルでも機能でもなく「どこまで任せ、どこで止めるか」です。定時実行と予算制御が標準になったことで、この設計を小さく安く試せるようになりました。

06まとめ ──​「常駐・予算・​無料」で​試す口実が​揃った

今回の更新は、派手な新モデルの話ではありません。しかし「決まった時間に働く」「決めた予算で止まる」「無料で試せる」という地味な3点は、AIエージェントをデモから業務へ運ぶときに最初に必要になる部品です。自前で組む場合との違いを並べると、預けられる範囲がはっきりします。

 自前で常駐エージェントを組むManaged Agentsに載せる
実行環境サーバー/Docker環境を構築・保守API 1呼び出しでサンドボックスが立つ
定時実行cronサーバーや自動化サービスを別途用意APIにスケジュール登録するだけ
コスト管理使用量の監視・停止処理を自作max_total_tokensで安全停止・再開
残る設計課題全部自分承認ポイント(HITL)と成果物の持ち出しは自分

使う前チェックリスト

  • 定時実行させたい業務はあるか(毎朝の集計・毎晩の点検・週次レポート)
  • 1回あたりのトークン予算を決めたか(まず小さく。incompleteから再開できる)
  • 成果物をサンドボックスの外に出す経路はあるか(環境は非アクティブ7日で消える)
  • ネットワーク許可リストを絞ったか(既定は開いている)
  • 人の承認を挟むポイントを決めたか(止める手段と止める設計は別)

走らせ方より先に、止まり方が整った。エージェントを業務に置く順序としては、それが正しいのだと思います。

電脳技巧集団​(AI職人ギルド)

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脚注

  1. Google公式ブログ「Introducing Managed Agents in the Gemini API」(2026-05-19・公開プレビュー開始)。
  2. Google公式ブログ「Expanding Managed Agents in Gemini API: background tasks, remote MCP and more」(2026-07-07)。
  3. Gemini API公式ドキュメント「Agents Overview」「Antigravity Agent」。サンドボックス仕様(Ubuntu・Python 3.12・Node.js 22・非アクティブ7日で削除)、cronトリガー、max_total_tokensの挙動(キャッシュ除外・incomplete停止・再開)、トークン消費目安(10万〜300万/複雑なワークフローで300万〜500万・〜$5程度)、タスク別コスト目安はいずれも本ドキュメントの記載による(2026-07-18閲覧時点)。
  4. 無料ティア開放・cronトリガー・max_total_tokensの3点は、Google DeepMind Philipp Schmid氏による告知(X・2026-07-17)と公式ドキュメントへの反映を確認。公式ブログ記事としての単独発表は執筆時点で未確認。
  5. 本記事の数値はすべてGoogle公式ドキュメント・公式ブログおよび上記告知ベースであり、CAG自身の検証値ではありません。プレビュー期間中のため仕様・価格は変わる可能性があります。

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