制作事例 | AI駆動開発の現場から
ショート動画を1本作るのに、どれくらいの時間がかかるだろう。台本を書き、ナレーションを録り、テロップを1枚ずつ載せ、BGMを合わせ、書き出す——慣れた人でも、数十分から数時間。毎日投稿しようものなら、それだけで日が暮れる。
これは、その一連を台本テキストを流し込むだけで全自動にした制作事例だ。音声・テロップ・背景映像・BGM・書き出しまで、人の手を介さず動画が出てくる。「動画編集」という、これまで人手と時間の塊だった領域に、AIとコードでパイプラインを通した。何を組み合わせ、どこで詰まり、どう抜けたか——設計判断ごと開示する。[1]

01動画1本に、何時間かけていますか
動画制作が大変なのは、工程が多くて、どれも手作業だからだ。台本を考える。声を当てる。映像や画像を用意する。テロップを1枚ずつ、タイミングを合わせて載せる。BGMを選んで音量を整える。最後に書き出す。一つひとつは難しくないが、全部やると重い。そして毎回、同じ手順を繰り返す。
「繰り返しの手作業」は、AIとコードが最も得意とする領域だ。だったら、人間は台本(言いたいこと)だけを書き、残りは全部仕組みに任せればいい。そう考えて作ったのが、このショート動画の自動生成パイプラインだ。一度組んでしまえば、次からは台本を変えるだけで、何本でも同じ品質の動画が出てくる。「1本作る」を頑張るのではなく、「作り続けられる工場」を作る——これが出発点だった。
とくにSNSの世界では、量と継続が効く。週に何本、毎日1本——出し続けられるかどうかが、届く範囲を決める。だが、1本に数時間かかるなら、続けるのは精神論になる。続けられないのは、やる気の問題ではなく、仕組みの問題だ。1本の制作コストを限りなくゼロに近づければ、「続ける」は自然に達成される。だから狙うべきは、個々の動画の出来栄えを職人芸で上げることではなく、安定した品質の動画を、低コストで、いくらでも生み出せる土台のほうだった。
02何を作るか:台本を入れたら、動画が出てくる
作ったものは、ひとことで言えば「台本 → 動画」の変換機だ。縦型(9:16)のショート動画を、複数のテンプレート(通常のナレーション動画/LINE風の対談/キャラクター実況/AI生成映像)から選んで作れる。
使い方はこうだ。台本を入力する。すると裏で、ナレーション音声が合成され、背景の映像や画像が用意され、テロップが音声にぴったり合わせて表示され、BGMが流れ、最後に1本のmp4として書き出される。テロップの見た目やBGMは「テイスト」を選ぶだけで一括で切り替わる。冒頭3秒のフック、本編、最後のCTA(フォロー誘導)という構成も自動で組まれる。人間がやることは、台本を書くことと、出来上がりを確認することだけ。編集ソフトを開く必要が、なくなった。
03自動化の全工程:音声・画像・動画・合成
「台本を入れたら動画が出る」の裏側は、いくつかの専門工程をつないだパイプラインになっている。それぞれ、その道のAI・ツールに任せる。
- ① ナレーション音声。台本を無料の音声合成エンジン(VOICEVOX)に渡し、自然な読み上げ音声を作る。複数の話者を使い分けられる。
- ② 背景の絵。台本の各場面に合う画像をAIで生成する。さらに、その静止画を動く映像に変換することもできる(後述)。
- ③ 字幕テロップ。音声の長さに合わせて、テロップを自動でタイミング配置。見た目は「テイスト」で一括切り替え。
- ④ 合成・書き出し。映像・音声・字幕・BGMを1本に重ね、mp4として書き出す。ここを担うのが Remotion という技術だ。
大事なのは、各工程を独立した部品として作り、つなぎ替えられるようにしたこと。通常のナレーション動画も、AI生成映像を使った動画も、同じ部品の組み替えで作れる。新しいテンプレートを足すのも、部品を並べ替えるだけ。工場のラインを組むように、動画づくりを構造化した。
04「コードで動画を作る」とは
このパイプラインの土台が、Remotionという技術だ。ひとことで言えば、Webサイトを作るのと同じ書き方(React)で、動画を作れる仕組み。動画の各フレームを、プログラムで「この瞬間はこう表示する」と記述する。
これが効くのは、動画が"計算で決まる"ようになるからだ。「テロップを0.3秒かけてふわっと出す」「背景をゆっくり拡大する」といった動きを、すべてコードで指定する。手で1コマずつ調整するのではなく、数式とパラメータで動かす。だから、台本が変わってもテロップの量が変わっても、同じルールで破綻なく組み上がる。テロップは音声の長さから自動で表示時間が決まり、テイストを変えれば全部のテロップの見た目が一斉に変わる。手作業の編集では、こうはいかない。「動画=デザインされたプログラム」に変えたことが、自動化のすべてを可能にした。
もう一つの利点は、同じ部品を使い回せることだ。テロップの出し方、背景の動かし方、CTAの見せ方——一度コンポーネント(部品)として作れば、どのテンプレートでも、どの動画でも再利用できる。Webサイトを部品の組み合わせで作るのと、まったく同じ発想だ。動画制作を「アート」から「エンジニアリング」の土俵に引き込んだことで、改善も拡張も速くなった。テロップのアニメーションを1か所直せば、全動画に反映される。作り込むほど、次が楽になる構造になっている。

05静止画に、命を吹き込む
動画の見栄えを大きく左右するのが、背景だ。ただの静止画でも成立するが、背景がゆっくり動くだけで、動画の質感は段違いに上がる。そこで、AIで生成した静止画を、さらに動く映像に変換する工程を足した(KLINGという画像→動画AIを使う)。
ここで地味に効くのがつなぎ目の処理だ。複数の短い映像クリップをただ並べると、切り替わりがガクッとして安っぽくなる。だから、クリップ同士を短いクロスフェード(数フレームかけて滑らかに溶け合わせる)でつなぎ、映像が足りない隙間は前後のフレームで埋める。ナレーションの長さに対して映像が短ければ、自動で補完する。こうした「目立たないけど、無いと安っぽい」部分を作り込むのが、見栄えと自動化を両立させる鍵だった。生成して終わりではなく、破綻なくつなぐところまでが仕事だ。
0632分→8分:重い処理を、待てる形にする
制作の途中、現実的な壁にぶつかった。AIで映像を生成するのに、時間がかかりすぎる。4つの場面の映像を順番に作っていたら、32分。これでは、処理の途中で時間切れ(タイムアウト)になってしまう。
原因は単純で、1つずつ順番に作っていたこと。映像生成は、頼んでから出来上がるまで"待ち時間"が長い。順番にやると、待ち時間が積み重なる。そこで、4つの場面を同時に作りに行く(並列処理)ように変えた。待ち時間が重なって消えるので、全体が 32分 → 8分(75%短縮) になった。「速くする」とは、処理そのものを速くするだけでなく、待ち時間をどう畳むかの設計でもある。重い処理ほど、順番にやらない。これは動画に限らず、AIを使うあらゆる仕組みで効く考え方だ。[2]
07「動いてるのに終わらない」を、捨てる
もう一つ、正直に書いておきたい詰まりがある。映像生成AIを呼ぶ部分を、最初は自前で細かく制御していた。「リクエストを送り、完了したか何度も問い合わせ、出来たら受け取る」——この処理を手書きしていた。だが、これが「処理中」のまま、いつまでも終わらない。エラーは出ないのに、完成しない。[3]
原因を探ると、完了の判定ロジックに穴があり、さらに大きな画像データの送り方にも問題があった。ここで取った判断は、自前の制御を捨てて、提供元の公式の道具(SDK)に乗り換えること。公式SDKは、リクエスト送信から完了待ち、結果取得までを正しく面倒みてくれる。乗り換えた結果、自前で書いていた約691行が、約280行(60%減)に縮み、しかも安定して動くようになった。「自分で細かく制御する方が偉い」わけではない。枯れた公式の道具に任せられるところは任せ、自分は本当に作るべきものに集中する。コードは、短く・確実な方が強い。これも設計判断だ。
08締め:作る前に、コストが見える
最後に、地味だが実務で効く機能を一つ。このパイプラインは、動画を作る前に「だいたいいくらかかるか」を表示する。画像生成やAI映像生成は、使うほどお金がかかる。だから、生成履歴の各カードに、モデルと秒数から計算したコスト概算を出すようにした。「この1本に、いくら使ったか」が見える。これは透明性であり、使い続けるための安心でもある。
この制作事例で伝えたいのは、「重い・手間な領域ほど、AIとコードで自動化する価値が大きい」ということだ。動画編集は、その最たるものだった。音声・映像・字幕・合成を部品化してつなぎ、待ち時間は並列で畳み、面倒な制御は公式の道具に任せ、コストは可視化する——派手なAIの裏に、こうした地味な設計判断が積み上がって、はじめて「台本を入れたら動画が出る」が実現する。電脳技巧集団(AI職人ギルド)は、「言語化できるものは、全て作る」。動画のように複雑なものでも、工程を言葉で分解できれば、仕組みに変えられる。

手作業で動画編集 vs パイプラインで自動生成。繰り返すほど、差は開く。
| 観点 | 手作業の動画編集 | 自動生成パイプライン(CAG) |
|---|---|---|
| 1本の手間 | 台本・録音・テロップ・BGM・書出を手作業 | 台本を入れるだけ・あとは自動 |
| 繰り返し | 毎回ゼロから同じ手順 | 台本を変えるだけで何本でも |
| 品質の均一さ | 作業者の腕とその日次第 | コードで決まる=常に一定 |
| テロップ・演出 | 1枚ずつ手で調整 | 音声に自動同期・テイストで一括切替 |
| 重い処理 | 待つしかない | 並列化で待ち時間を畳む(32→8分) |
| コスト | 見えにくい(人件費) | 生成前に概算を表示 |
※ 本記事はCAGが実際に開発した動画自動生成パイプラインの制作事例。数値・構成は実装に基づく(v0・2026時点)。利用ツール(Remotion / VOICEVOX / 画像・動画生成AI)は技術紹介として記載。
脚注
- 本件は、台本テキストを入力すると、ナレーション音声合成(VOICEVOX)・背景画像/映像生成(AI画像+KLING)・字幕テロップの自動配置・BGM・CTAを経て、1本の縦型ショート動画(mp4)を自動出力するパイプライン。複数テンプレート(ナレーション動画/LINE風対談/キャラクター実況/AI生成映像)に対応。動画合成基盤は Remotion(React で動画を記述する技術)。
- 映像生成(画像→動画)は1クリップあたりの待ち時間が長く、4セグメントを直列処理すると合計32分かかり処理上限を超過していた。各セグメント生成を並列実行(同時リクエスト)に変更したことで待ち時間が重複解消され、合計8分(約75%短縮)になった。重い非同期処理は直列にしないのが原則。
- 映像生成AIの呼び出しを当初は自前のREST API+ポーリングで実装していたが、完了判定ロジックの穴と大容量画像データの送信方式の問題で「処理中のまま完了しない」サイレントな不具合が発生。提供元の公式SDKへ移行し、送信(ストレージ経由アップロード)・完了待ち・結果取得を一任することで、自前実装の約691行→約280行(60%削減)に縮小し、安定動作を得た。
「動画や画像の量産に、毎回時間が溶けている」——その繰り返し、仕組みに変えられます。
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