Cloudflare AI Searchとは​──社内資料検索で​試した​OCR・出典・旧版の​扱い

Cloudflare AI Searchで架空の社内資料5件を検索し、OCRの有無と旧版の扱いを54回比較した。紙のPDFの本文はOCR有効で取得できた一方、回答が手続きを省略する例もあった。出典と元資料を確かめるデモで、導入時の判断点を整理する。

甲斐ショウジ甲斐ショウジ
CAG主宰/合同会社ATK CAIO(最高AI責任者)
技術12分で読めます
技術Cloudflare AI Searchとは──社内資料検索で試したOCR・出典・旧版の扱い

Cloudflare AI Searchは、登録した資料を質問で探し、見つけた内容から回答を作るサービスです。2026年10月1日に正式版が発表されました。OCRによる紙のPDFの読み取りや、画像を使った検索もその更新に含まれます。[1]

電脳技巧集団(AI職人ギルド)では、架空の規程と操作マニュアルを使い、2026年10月4日に社内資料検索の小さなデモを作りました。今回のスキャンPDFは、OCRを有効にすると手続き本文まで検索結果に現れました。ただし、回答が「承認」を「確認」と縮める例もありました。回答・出典・原文を並べて確認するところまでが、このデモの対象です。

紙の規程とスキャナー、資料を探すノートパソコンの情景
紙の資料から、質問と原文の確認へ。AI生成の情景イメージで、製品の実画面ではありません。

01 Cloudflare AI Searchで、​質問から​元資料まで​たどる

質問から、回答の原文を確認するまで質問普段の言葉ホテル代は?検索関係する抜粋意味+語句回答抜粋から生成資料名も表示原文を確認必要な手順出典を開く質問普段の言葉 · ホテル代は?検索関係する抜粋 · 意味+語句回答抜粋から生成 · 資料名も表示原文を確認必要な手順 · 出典を開く
検索結果と回答を照合し、判断に必要な手順を元資料で確認する。

「出張先のホテル代はいくらまで?」と聞くと、出張規程の該当部分を探し、その内容から回答を作ります。資料名や保存場所を覚えていなくても、普段の言葉で探せるのが入口になります。

内部では、資料を小さな文章のまとまりに分け、質問に関係する部分を取り出してから生成AIへ渡します。この文章のまとまりを「チャンク」と呼びます。言葉の意味の近さで探す検索と、語句の一致で探す検索を組み合わせる方式も使えます。[2]

ここで、取り出された資料がすべて回答の根拠になるとは限りません。今回も、経費の質問に入社案内が検索結果として混ざる場面がありました。画面には回答だけでなく、ファイル名と該当部分の抜粋を表示し、読む人が確認できるようにします。AI Searchのレスポンスには、この表示に使えるチャンクと元資料の情報が含まれます。[3]

02 紙の​PDFには、​OCRの​設定を​確かめる

今回のスキャンPDFOCR 無効OCR 有効手続き本文なし手続き本文ありファイル名・ページ見出し添付・承認の記載を取得「処理完了」だけでは本文を読めたと判定しないOCR 無効手続き本文なしファイル名・ページ見出しOCR 有効手続き本文あり添付・承認の記載を取得「処理完了」だけでは本文を読めたと判定しない
架空のスキャンPDFを実測。OCRの設定変更後は全件の再索引を待った。

OCRは、画像に写った文字を読み取る処理です。文字を選択・コピーできるPDFと、紙面を画像として保存したPDFでは、取り込み時に扱える情報が異なります。

2026年10月4日時点の公式仕様では、OCRは初期状態で無効です。インスタンスのindexing_options.use_ocrを有効にすると、資料全体の再インデックスが始まります。今回も設定変更後に再処理のジョブを確認し、5件すべての処理が完了してから比較を続けました。[4]

PDFの設定 公式のファイル容量上限(2026-10-04時点)
OCR無効 4 MiB
OCR有効 10 MiB

上限内で登録できることと、必要な本文を読めることは別です。今回のスキャンPDFはOCR無効でも「処理完了」になり、ファイル名が検索結果に現れました。しかし、その抜粋にはPDFの情報とページの見出しがあるだけで、紙面に書いた手続きは含まれていませんでした。

Cloudflare管理画面でOCR有効・使用モデル・検索設定を確認した実画面
Cloudflare管理画面でOCR有効・使用モデル・検索設定を確認した実画面
Cloudflare管理画面でOCR有効・使用モデル・検索設定を確認した実画面(2026-10-04)。画像を開いて拡大できます。

画像の検索とOCRも分けて考えます。OCRは文字を読み取り、画像対応の埋め込みモデルは画像の特徴を検索に使います。今回の時計アイコンの質問は、OCR無効でも登録画像の説明文を根拠に答えられました。この結果を、OCRによる改善として数えることはできません。[5]

03 出張・経費の​架​空​資料で、​回答と​抜粋を​比べる

PDFの取得本文生成回答の一部1. 紛失申告書を作成2. 経費精算に添付3. 直属上長の承認紛失申告書を作成直属上長に「確認」承認の明記は 1/3 回OCR有効・旧版混在の観察。添付手順も回答では省略PDFの取得本文1. 紛失申告書を作成2. 経費精算に添付3. 直属上長の承認生成回答の一部紛失申告書を作成直属上長に「確認」承認の明記は 1/3 回OCR有効・旧版混在の観察添付手順も回答では省略
書類名と担当者の一致だけで、手続きが十分に伝わったとは扱わない。

使用した資料は次の5件です。金額・期限・手続き・アプリの画面はすべてデモ用に作ったもので、CAGや顧客の実際の社内規程ではありません。

資料 形式 デモ上の内容
出張規程・現行版 Markdown 2026-10-01版。国内宿泊は1泊12,000円、精算は帰着後5営業日以内
領収書紛失の手続き スキャンPDF 紛失申告書を添付し、直属上長の承認を受ける
経費アプリの操作案内 PNG画像 鉛筆は下書き、時計は提出済み、戻る矢印は差し戻し
出張規程・旧版 文字を取り出せるPDF 2026-04-01版。国内宿泊は1泊9,000円
入社案内 Markdown 入社初日の案内と入館証紛失の連絡先
架空資料5件の取り込みが完了したCloudflare管理画面
架空資料5件の取り込みが完了したCloudflare管理画面
架空資料5件の取り込みが完了したCloudflare管理画面(2026-10-04)。画像を開いて拡大できます。

スキャンPDFは、ローカルの文字抽出で0文字になることを先に確認しました。比較中に資料を変えないよう、5件のファイルのハッシュも保存しています。

文字層のない、領収書紛失手続きの架空PDF
文字層のない、領収書紛失手続きの架空PDF
文字層のない、領収書紛失手続きの架空PDF(2026-10-04)。画像を開いて拡大できます。

固定した6問を、OCR無効・旧版混在、OCR有効・旧版混在、OCR有効・現行資料限定の3条件で、それぞれ3回実行しました。比較対象は合計54リクエスト。生成モデルと検索設定を揃え、キャッシュ・質問の自動書き換え・検索後の並べ替えは無効にしています。[6]

たとえば、「レシートをなくしたら、何を出して誰に確認する?」という質問では、OCR無効の1回目に次の回答が返りました。

レシートをなくした場合は、レシートの再発行を出して、経理担当者に確認する必要があります。ただし、資料内に記載がありません。

再発行や経理担当者という手続きは、このデモの資料にはありません。「記載がありません」と最後に付いていても、その前に補った説明は誤りです。無効の3回とも、必要な書類と担当者を正しく答えられませんでした。

OCRを有効にした後は、同じPDFから次の内容が検索抜粋に現れました。

  1. 「紛失申告書」を作成する。
  2. 紛失申告書を経費精算に添付する。
  3. 直属の上長から承認を受ける。

OCR有効・旧版混在の1回目の回答は、次のとおりでした。

レシートをなくした場合は、「紛失申告書」を作成し、直属の上長に承認を受ける必要があります。
根拠にしたファイル名: receipt-loss-scan.pdf

ただし同条件の残り2回では、回答の表現が「直属の上長に確認してもらう」になりました。書類と相手は合っていますが、規程が求める承認の意味は弱まっています。添付の手順も回答文では省略されていました。検索で原文を取得できても、回答が手続きを十分に伝えるとは限らないことが、実測から分かります。

管理画面で領収書紛失の回答と出典を開いた実例
管理画面で領収書紛失の回答と出典を開いた実例(2026-10-04)。画像を開いて拡大できます。

管理画面で追加確認した上の例でも、回答は承認を「確認」と言い換えています。出典のreceipt-loss-scan.pdfを開くと、取得した本文に「直属の上長から承認を受ける」と表示されました。この画面例は管理画面の既定生成指示を使っており、指示を固定した54回の比較には含めていません。

出典を開くと、添付と承認を含むPDF本文を確認できる
出典を開くと、添付と承認を含むPDF本文を確認できる
出典を開くと、添付と承認を含むPDF本文を確認できる(2026-10-04)。画像を開いて拡大できます。

04 旧版と、​資料に​ない​質問も​試す

旧版が検索結果に現れたリクエスト数旧版混在現行資料限定18 / 180 / 186問 × 各3回status: current旧版の取得件数の比較。誤答率を表す図ではない旧版混在18 / 186問 × 各3回現行資料限定0 / 18status: current旧版の取得件数。誤答率とは別
各条件18リクエスト、2026-10-04実測。メタデータは管理者が更新する。

比較結果は次のとおりです。各欄は同じ質問を3回実行した観察結果で、一般的な精度を示す指標ではありません。

質問 OCR無効・旧版混在 OCR有効・旧版混在 OCR有効・現行資料限定
国内ホテル代の上限 12,000円と回答 3/3 12,000円と回答 3/3 12,000円と回答 3/3
帰着後の精算期限 5営業日と回答 3/3 5営業日と回答 3/3 5営業日と回答 3/3
領収書紛失の手続き 書類・担当者が不一致 3/3 書類・担当者は一致 3/3。承認を明記 1/3 書類・担当者・承認を明記 3/3
時計アイコンの意味 提出済みと回答 3/3 提出済みと回答 3/3 提出済みと回答 3/3
現在も9,000円なのか 現行の12,000円と回答 3/3 現行の12,000円と回答 3/3 現行の12,000円と回答 3/3
海外ホテル代の上限 記載なしと回答 3/3 記載なしと回答 3/3 記載なしと回答 3/3

旧版を混ぜても、今回の宿泊費の回答は現行版の12,000円を選べました。一方、OCR有効・旧版混在では、6問すべてで旧版PDFも検索結果に含まれました。回答が合っていることから、将来も最新の規程を自動で選べるとは判断できません。

現行資料限定では、資料に付けたstatus: currentというメタデータで検索対象を絞りました。メタデータは資料に付ける分類情報です。この条件で送った18リクエストでは、旧版PDFは一度も検索結果に現れませんでした。[7]

フィルタ後の領収書紛失回答では、3回とも承認を明記しました。ただし、3回ずつの観察から「旧版を外せば承認の省略を防げる」という因果までは断定しません。担当者の仕事は、現行・旧版の分類を更新し、返された抜粋と回答を照合することです。

海外出張の上限は、そもそも5件の資料に用意していません。モデルには資料だけで答え、記載がなければそう伝えるよう指示しました。海外の質問は全9回で「資料内に記載がありません」と返りました。ただし領収書紛失では、同じ指示を与えていても根拠のない手続きを補いました。不明を示す動作は、質問ごとに確かめる必要があります。

管理画面で海外出張の上限が記載されていないと回答した実例
管理画面で海外出張の上限が記載されていないと回答した実例
管理画面で海外出張の上限が記載されていないと回答した実例(2026-10-04)。画像を開いて拡大できます。

この画面は、領収書紛失の質問に続けて海外上限を尋ねた追加例です。会話履歴を含む条件なので、独立した比較リクエストの9回とは分けて扱います。

時計アイコンについても、OCR有効・旧版混在の1回は、正しい状態を答えながらファイル名を回答文に記載しませんでした。回答文の自己申告だけに頼らず、APIが返した資料情報から出典を表示する設計が役立ちます。

05 11月からの​費用は、​回答生成まで​分けて​数える

利用量を、処理の段階ごとに数える取り込み資料・OCR処理トークン保存索引済み資料GB-month検索質問ごとの検索クエリ数回答生成モデル利用別サービス取り込み資料・OCR · 処理トークン保存索引済み資料 · GB-month検索質問ごとの検索 · クエリ数回答生成モデル利用 · 別サービス
AI Searchの利用量課金は2026-11-01開始予定(2026-10-04確認)。回答生成を含む請求実額は未取得。

2026年10月4日時点の公式案内では、AI Searchの利用量課金は2026年11月1日に始まります。費用を見るときは、資料の取り込み、保存、検索、画像処理に分けます。[8]

AI Searchの項目 毎月の無料枠 超過時の単価(米ドル)
取り込み 500万トークン 100万トークンあたり0.75ドル
画像処理 取り込みと共通の無料枠 画像処理の追加分として100万トークンあたり0.50ドル
保存 10 GB-month 1 GB-monthあたり2.00ドル
意味検索・ベクトル検索・ハイブリッド検索 1,000クエリ 1,000クエリあたり0.75ドル
全文検索 1,000クエリ 1,000クエリあたり0.10ドル

横にスクロールして、無料枠と単価を確認できます。

トークンは、サービスが文章などの処理量を数える単位です。GB-monthは保存量と保存期間を組み合わせた単位で、ファイルを一度送った容量だけからは決まりません。取り込み量は、元ファイルの文字数とも同じではありません。

この料金だけで、回答生成を含む総額は出せません。公式仕様では、回答を生成するモデル、質問を書き換えるモデル、外部の埋め込み・再ランキングモデルなどは別サービスとして課金されます。画像処理にも追加の処理量があります。[8]

今回取得できた実測値と、取得していない値を分けると、次のようになります。

項目 今回の確認結果(2026-10-04)
元資料5件の合計容量 324,946バイト。請求対象の保存量とは別
比較用チャット呼び出し 54回、すべてHTTP 200
生成モデルの入力トークン 39,441
生成モデルの出力トークン 1,476
生成モデルの合計トークン 40,917。取り込みのトークン数とは別
資料取り込み・画像処理の課金トークン 未取得
請求対象の保存量・請求実額 未取得

管理画面の画面例を撮るための追加操作は、54回の比較とは別です。上表の生成量も比較リクエスト分に限ります。「資料が小さいから総額もこの金額」と見積もらず、導入後の利用明細で項目ごとの使用量を確認します。

06 最初は、​一つの​業務と​管理者を​決める

一つの業務で、対象と責任者を決める対象出張・経費現行規程閲覧対象従業員認証・権限更新規程の管理者現行・旧版判断上長・経理承認・例外対象出張・経費 · 現行規程閲覧対象従業員 · 認証・権限更新規程の管理者 · 現行・旧版判断上長・経理 · 承認・例外
今回のデモは検索の観察。従業員の認証・アクセス権管理は実装していない。

最初の対象は、出張・経費や製品マニュアルなど、資料の管理者が明確な業務に絞れます。導入前に次の役割を決めておくと、古い資料や根拠不足に対応できます。

決めること 出張・経費での例
何を検索するか 現行の出張規程と経費マニュアル
誰が見られるか 対象従業員。所属や資料の機密度に応じて認証・権限を設計
誰が更新するか 規程の管理者。改定時に現行・旧版の分類も更新
誰が判断するか 上長・経理担当。例外承認や精算確定は担当者が行う

今回のメタデータフィルタは、検索対象を絞るためのものです。利用者の認証やアクセス権管理は実装していません。社内で使う場合には、権限のない資料を検索へ渡さない仕組みを別に設けます。[7]

このデモで確認できたのは、紙面の手続きを取得する設定と、回答の省略を原文で見つける流れです。実務に持ち込む前には、自社の資料でも、文字が読めるか、旧版が除かれるか、資料にない質問へ答えを作っていないかを確認します。回答から元資料を開き、必要な承認や例外処理まで確かめられることを、導入の基準にします。

担当者の手元で、紙の手続きと画面の抜粋を見比べる情景
例外や承認は、元資料と照らして担当者が判断する。AI生成の情景イメージです。

出典・実測の確認範囲

  1. Cloudflare公式発表「AI Search is now generally available」、2026-10-01発表、2026-10-04確認。GAの機能説明は公式情報であり、本デモの観察とは区別した。
  2. AI Searchの検索方式、2026-10-04確認。今回の方式はhybrid。
  3. 回答で出典を表示する方法、2026-10-04確認。取得チャンクのitem.keyとtextを利用する。返された全チャンクが回答を支持するとは扱わない。
  4. データソース・OCR・ファイル容量上限、2026-10-04確認。実測の設定変更、再処理ジョブ、5件の完了状態はローカルの証跡にも保存した。
  5. 対応モデル、2026-10-04確認。実験の埋め込みは@cf/qwen/qwen3-vl-embedding-2b。時計アイコンは文字で質問し、登録済み画像の説明文を取得した。画像を質問として送るAPIは本実験の対象外。
  6. CAGによる架空資料デモ、2026-10-04実測。生成モデルは@cf/meta/llama-3.3-70b-instruct-fp8-fast。最大検索件数5、一致しきい値0.4、チャンクサイズ1,024トークン、重複10%。生成指示は資料限定・未記載の明示・現行版優先・ファイル名提示を指定。54レスポンスの保存、全回答の読解、該当抜粋との照合に基づく。一般的な精度や本番の安全性を示すベンチマークではない。
  7. メタデータによる絞り込み、2026-10-04確認。実験では{"status":"current"}を検索前フィルタに指定した。認証・認可の代替にはしない。
  8. 公式の上限・料金、2026-10-04確認。単価は2026-11-01開始予定の米ドル料金。画像処理は取り込みの基本料金に追加される。生成・質問書き換えなどの別課金を含む請求実額は本デモで取得していない。

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