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「AI、使えます」と言う人は、この2年で一気に増えた。履歴書のスキル欄にも、生成AIの名前が並ぶようになった。
けれど、実際に画面を共有してもらうと、差はすぐに出る。ある人は、AIに単発の質問を投げて、返ってきた答えをそのまま貼る。別の人は、過去のメモ、業務のルール、検証の手順、タスク管理、使い回せる指示、AIに任せる範囲と自分が判断する範囲の線引きまで含めて、一つの仕事の流れとしてAIを動かす。同じ「AIを使う」でも、見えている景色がまるで違う。
いま採用やAIスタートアップの運用現場で起きているのは、この差をどう見抜くか、という問題だ。そして見抜く方法として増えているのが、画面共有だった。この記事では、何が変わったのか、AI活用力(AI fluency)とは結局何を見る力なのかを外部の動向から解説し、最後に「自分の仕事で"見せられるAIワークフロー"を作る5ステップ」まで落とす。[8]

01「AI使えます」は、もう自己申告できない
まず、いま起きている論点から。SNS(X)では「AI活用力は、履歴書や口頭説明ではなく、画面共有で実際のワークフローを見れば一発で差が出る」という趣旨の投稿が広がった。いわく、レベル1はただAIを素のチャットで使うだけ——という指摘だ。[8]
ただし、この投稿が触れている個別企業の規模や、いわゆる「Company OS」の運用詳細、動画内の数字は公開情報からは裏が取れない。だからここでは、あくまで象徴的なSNSシグナルとして扱い、事実の主軸には置かない。裏取りできる公式・報道の情報で、この論点がどこまで妥当かを見ていく。
結論から言えば、中核の主張——「AI活用力は自己申告ではなく、実際の作業を見れば分かる」——はかなり妥当だ。理由はシンプルで、採用側が「AI利用を禁止しても、候補者が裏で使う現実」を避けられなくなったから。隠す前提が崩れたなら、いっそ使わせて観察したほうが、実務に近い評価ができる。ここから、面接そのものの設計が変わり始めた。
02何が変わったのか:禁止から、観察へ
以前は「面接でAIを使ったらズル」だった。いまは、あえて使わせて、その使い方を見る企業が出てきている。報道ベースで確認できるものを並べる。
- Canva:技術面接でAI利用を招き、画面共有でAIとのやり取りも観察する。出力だけでなく、候補者がAIにどう問い、どう疑い、どう直すかを見る、とされる。[1]
- Arcade:持ち帰り課題でAI利用を前提にし、AIとの会話の記録(transcript)を提出させる。画面共有ではないが、「出力」ではなく「過程」を見る点は同じだ。[1]
- Google:2026年後半から一部のソフトウェアエンジニア面接でGemini利用を許可するパイロットを予定と報じられている。評価対象は、prompting、出力の検証、デバッグ。[2]
- Meta / McKinsey:報道ベースでは、AIアシスタントを使う面接を準備・試行中とされる(公式一次情報ではないため確度は中)。[1]
これらは「AIを使わせる面接」への移行を示す代表例だ。共通するのは、AIを隠す対象から、観察する対象へ変えたこと。AIが日常業務の中にあるなら、面接もそれを前提にしたほうが、入社後の実務に近い——という発想だ。この流れは採用に限らない。次に見るように、評価軸そのものが動いている。
03AI活用力の中身:promptではなく、文脈と検証と判断
では「AI活用力(AI fluency)」とは、具体的に何を見る力なのか。ここでいちばん参考になるのが、AIを全社に組み込んだZapierの整理だ。
Zapierは、AI fluencyを「効果的に・責任を持って・自信を持って、日常業務でAIを使えること」と定義し、単なる操作ではなくワークフローへの組み込みまで含めている。そして2026年3月、同社は採用ルーブリックをV2へ更新し、最低ラインを引き上げた。ポイントは「一回きりの指示(one-off prompt)」ではなく、繰り返し使える仕組み(repeatable systems)、中核業務への組み込み、成果への明確な影響を最低ラインにしたことだ。つまり「使ったことがある」では足りず、「仕事の流れに組み込めているか」を見る。[3][4]
採用支援側の実務フレームワークも、同じ方向を向いている。Recruoが公開したシニアエンジニア向けのAI活用力面接(約45分)は、4つのパートで構成されるという。[5]
- prompt post-mortem:過去に自分がAIとやり取りした事例を振り返らせ、なぜそのやり方にしたかを説明させる。
- live AI-assisted task:その場でAIを使って課題を解かせ、進め方を観察する。
- hallucination trap:AIがもっともらしい誤答を返す状況をわざと作り、候補者がそれに気づけるかを見る。
- meta question:AIをどこで使い、どこで使わないかの判断基準を問う。
並べてみると、評価されているのはprompt文の巧みさではない。文脈を渡す力、出力を疑う力、間違いに気づく力、任せる範囲を線引きする力——AIに仕事を渡す「前後」の判断だ。

04画面共有で、本当に見えるもの
なぜ「画面共有」なのか。それは、いま挙げた判断が、成果物だけを見ても分からないからだ。完成したコードや資料は、AIで作ろうが手で作ろうが、見た目は同じになりうる。差が出るのは過程のほうにある。画面を共有してもらうと、次のようなことが見えてくる。
- どの文脈を渡しているか:いきなり質問を投げるのか、業務ルールや過去の経緯、完了条件を先に渡してから頼むのか。
- 出力を疑えるか:返ってきた答えを鵜呑みにするのか、テストや裏取りで検証する手を持っているか。
- 反復の方向が良いか:うまくいかない時、闇雲に投げ直すのか、原因を切り分けて次の一手を決めるのか。
- 作業ログや記憶を持っているか:その場限りで消えるのか、次回に使える形(メモ・指示・手順)で残しているか。
- 人間が判断すべき場所を分かっているか:何でもAIに任せるのか、危ない操作や最終判断は自分で持つのか。
要するに、画面共有はAIとの「やり取りの質」を可視化する。面接で見るべきは「AIを使ったか」ではなく、「AIが間違えた瞬間に、どう気づいて、どう立て直したか」だ——という言い方が、この変化をいちばん的確に表している。
05次のポートフォリオは、「作業OS」になる
ここまでを踏まえると、これからのポートフォリオは、完成品の一覧だけでは足りなくなる。成果物ではなく、"成果物が生まれる仕組み"を見せられるかが問われ始めている。
個人の便利技(上手な指示の集まり)ではなく、業務をAIが扱える形に分解した運用の型——SNSではこれを「Company OS」と呼ぶ文脈も出ている(ただし具体的な効果や人数の数字は未検証なので、ここでは概念として扱う)。たとえば、会議 → 要点整理(brief)→ タスク化 → ナレッジに記録 → 次アクション、という一連の流れを、AIが繰り返し回せるパイプラインにしておく。そういう「作業OS」を持っているかどうかが、AI活用力の証拠になる。

私たち電脳技巧集団(AI職人ギルド)も、日々の開発をこの形で回している。作業のルールを AGENTS.md に契約として書き、調べたことや判断をナレッジ(Wiki)へ戻し、AIの出力は自動検証を通し、外部送信や最終判断は人間が承認する(HITL)。この記事自体も、情報収集 → 深掘りレポート → 記事化、という定型のパイプラインから生まれている。派手な話ではないが、こうした「仕組みで回す」やり方が結果的にいちばん強い証拠になる——というのが、今回の変化と重なるところだ。
06注意点:画面共有も、万能ではない
一方で、「画面共有すればAI活用力が正しく測れる」と単純化するのは危うい。冷静に見ておくべき点を挙げる。
- 評価する側のAIリテラシーが低いと、見誤る:良い使い方を「遅い」と誤解したり、派手なだけの使い方を「上手い」と評価してしまう。
- ツール差・環境差による不公平:候補者が使い慣れたツールや、作り込んだ環境の差が、実力以外の部分で結果を左右しうる。プライバシーや機密、録画の保存にも配慮が要る。
- 「AIショーケース芸」の危険:仕組みを持っているように"見せるだけ"の演出も出てくる。だからこそ、成果物・作業ログ・検証・失敗からの修正まで含めて見る必要がある。
- AI活用力に寄せすぎる危険:ツールの扱いばかりを重く見ると、ドメイン知識やチームワーク、倫理、セキュリティ判断といった、本来もっと重要な力を軽視しかねない。
採用支援のPinnacleは、この点を鋭く整理している。AI利用を「許可する」だけでは評価の質は上がらない。それは単なる設定の切り替え(permission toggle)にすぎず、本当に必要なのは面接そのものの再設計——質問の作り方と、面接官の訓練まで変えること、だと。[6]AIを使わせるかどうかは入口の話で、肝は「何を、どう見るか」の設計にある。PM採用でも「AIでproductを作る力」と「AI productを作る力」を分けて評価する動きが出ており、職種ごとに見る中身は変わる。[7]
07自分の仕事で試す:見せられるAIワークフローを作る5ステップ
最後に、この変化を「自分ごと」にするための、実践的な手順を置いておく。採用される側でも、AIを業務に入れたい事業者でも、まずは自分の仕事を1つ、画面共有で見せられる流れにしてみるのが早い。
- 業務を1つ選び、AIに渡す前に「文脈」を1枚にまとめる。業務ルール・過去の経緯・完了条件を先に渡す。いきなり質問を投げないだけで、出力の質は変わる。
- AIに任せる範囲と、人間が判断する範囲の線を引く。危ない操作・外部送信・最終判断は自分で持つ(HITL)。「何を任せないか」を決めるのが、実は活用力の中核だ。
- 出力を検証する手順を決める。テスト・裏取り・別の観点での問い直しなど、"AIの間違いに気づく関所"を工程に組み込む。もっともらしい誤答を疑えるかが分かれ目になる。
- やり取りとログを残す。使った指示、下した判断、失敗とその修正を、次回に使える形で残す。これが「一発芸」を「再利用できる資産」に変える。
- 同じ流れをもう一度回して、再現性を確認する。一度うまくいったやり方が、翌週も、別の案件でも回るか。繰り返せる仕組みになって初めて、それは「仕組み」と呼べる。
この5つを通すと、あなたの仕事は「AIを使った成果物」から「AIを組み込んだ仕事の流れ」に変わる。そして、その流れこそが、これからいちばん問われるAI活用力の証拠になる。「AI使えます」と言う代わりに、画面を共有して黙って回して見せる——たぶん、それがいちばん速い。
AI活用力を、どう見るか。評価の入口が「言う」から「見せる」へ動いた変化を、一枚に。
| 見る観点 | 「AIを使えるか」で見る(旧) | 「作業の流れを見せられるか」で見る(今) |
|---|---|---|
| 評価の入口 | 履歴書・自己申告・資格 | 画面共有・実ワークフローの観察 |
| 何を見るか | prompt文の巧みさ・単発の出力 | 文脈投入・検証・判断・反復・記録 |
| 面接の姿勢 | AI利用を禁止する | 許可して観察(+質問と面接官を再設計) |
| 分かれ目 | 正解にたどり着いたか | AIの誤りに気づき、立て直せたか |
| ポートフォリオ | 完成品の一覧 | 成果物が生まれる"仕組み"(作業OS) |
| 最低ライン | 使ったことがある | 繰り返し回せる仕組みに組み込めている |
※ 本記事はBusiness Insider・Zapier・Recruo・Pinnacle・Maven等の公式ブログ/報道を、AIを業務に使う側の観点から解説したもの。事例・数値は公式/報道時点の引用であり、CAG自身の検証結果ではない。X投稿やSNS由来の主張(「Company OS」の効果・人数等)は本文取得が限定的なため未検証・象徴的シグナルとして扱っている(v0・2026-07時点)。
脚注・出典
- Business Insider「More hiring managers want you to prove you're good with AI during interviews」(2026-02-13)。Canva(画面共有でAIとのやり取りを観察・CTO Brendan Humphreys)、Arcade(AI会話transcript提出・CEO Alex Salazar)、Meta、McKinsey(Lilli利用面接パイロット)の事例。businessinsider.com
- Business Insider「Google plans to let software engineers use AI assistants in job interviews」(2026-05-07)。Gemini利用パイロット、prompting/output validation/debuggingの評価。Google広報が確認と報道。businessinsider.com
- Zapier「One year later: Raising the AI fluency bar for every Zapier hire」(2026-03-31)。全候補者評価、V2ルーブリックで repeatable systems・core workへの組み込み・clear impact を最低ラインに。zapier.com
- Zapier「How to measure your AI fluency」。AI fluencyを「effective, responsible, confident」な日常業務でのAI利用と定義し、workflow integrationを含む。zapier.com
- Recruo「Assess AI Skills in Senior Engineers: 2026 Framework」(2026-04-20)。約45分のフレームワーク。prompt post-mortem/live AI-assisted task/hallucination trap/meta question の4部構成、screen shareを明示。recruo.com
- Pinnacle「Should you redesign the technical hiring process to allow AI use?」(2026-06-05)。AI利用許可は permission toggle ではなく interview redesign trigger。質問設計と面接官訓練の再設計が必要という整理。heypinnacle.com
- Maven「How to interview product managers for AI fluency」。PM領域でも「AIでproductを作る力」と「AI productを作る力」を分けて評価する流れ。maven.com
- X(Aakash Gupta ほか)の「AI fluencyはlive screen shareで見える」論点、および「Company OS in Claude Code」文脈。本文取得が限定的なため象徴的なSNSシグナルとして扱い、個別の数字・運用詳細は未検証。本記事は外部発表・報道の解説であり、CAGが検証した事実ではない。
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