「ChatGPT​使えます」では、​もう​差が​つかない​ ──AI活用力の​証明が​"画面共有"へ​移った​話

「AI使えます」と言う人は増えた。でも画面共有してもらうと、差はすぐ出る。単発の質問を投げる人と、過去のメモ・業務ルール・検証手順・再利用可能な指示まで含めて"一つの仕事の流れ"としてAIを動かす人。採用の現場では、AI利用を禁止する面接から、あえて許可して使い方を観察する面接へ移り始めた(Canva・Google・Zapier・Recruo)。評価軸が「AIを使えるか」から「AIを組み込んだ仕事の流れを見せられるか」へ動いている。何が変わったのか、そして自分の仕事で"見せられるAIワークフロー"を作る5ステップを、外部動向をもとに解説する。

甲斐ショウジ甲斐ショウジ
CAG主宰/合同会社ATK CAIO(最高AI責任者)
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技術「ChatGPT使えます」では、もう差がつかない ──AI活用力の証明が"画面共有"へ移った話

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「AI、使えます」と言う人は、この2年で一気に増えた。履歴書のスキル欄にも、生成AIの名前が並ぶようになった。

けれど、実際に画面を共有してもらうと、差はすぐに出る。ある人は、AIに単発の質問を投げて、返ってきた答えをそのまま貼る。別の人は、過去のメモ、業務のルール、検証の手順、タスク管理、使い回せる指示、AIに任せる範囲と自分が判断する範囲の線引きまで含めて、一つの仕事の流れとしてAIを動かす。同じ「AIを使う」でも、見えている景色がまるで違う。

いま採用やAIスタートアップの運用現場で起きているのは、この差をどう見抜くか、という問題だ。そして見抜く方法として増えているのが、画面共有だった。この記事では、何が変わったのか、AI活用力(AI fluency)とは結局何を見る力なのかを外部の動向から解説し、最後に「自分の仕事で"見せられるAIワークフロー"を作る5ステップ」まで落とす。[8]

ダークテーマの画面共有面接のシーン。候補者の共有画面にAIチャット・文脈メモ・検証結果のパネルが並び、面接官がそのやり取りの過程を観察している
完成した答えではなく、AIとの"やり取りの過程"を見る——採用の現場で起きている静かな変化

01​「AI​使えます」は、​もう​自己申告できない

まず、いま起きている論点から。SNS(X)では「AI活用力は、履歴書や口頭説明ではなく、画面共有で実際のワークフローを見れば一発で差が出る」という趣旨の投稿が広がった。いわく、レベル1はただAIを素のチャットで使うだけ——という指摘だ。[8]

ただし、この投稿が触れている個別企業の規模や、いわゆる「Company OS」の運用詳細、動画内の数字は公開情報からは裏が取れない。だからここでは、あくまで象徴的なSNSシグナルとして扱い、事実の主軸には置かない。裏取りできる公式・報道の情報で、この論点がどこまで妥当かを見ていく。

結論から言えば、中核の主張——「AI活用力は自己申告ではなく、実際の作業を見れば分かる」——はかなり妥当だ。理由はシンプルで、採用側が「AI利用を禁止しても、候補者が裏で使う現実」を避けられなくなったから。隠す前提が崩れたなら、いっそ使わせて観察したほうが、実務に近い評価ができる。ここから、面接そのものの設計が変わり始めた。

「言う」(自己申告) 履歴書・スキル欄「ChatGPT使えます」中身は見えない 「見せる」(画面共有) 実際のワークフロー文脈・検証・判断やり取りの過程が見える 評価軸の移動
「AIを使えると言えるか」から「AIを使う様子を見せられるか」へ——評価の入口が動いた

02何が​変わったのか:禁止から、​観察へ

以前は「面接でAIを使ったらズル」だった。いまは、あえて使わせて、その使い方を見る企業が出てきている。報道ベースで確認できるものを並べる。

  • Canva:技術面接でAI利用を招き、画面共有でAIとのやり取りも観察する。出力だけでなく、候補者がAIにどう問い、どう疑い、どう直すかを見る、とされる。[1]
  • Arcade:持ち帰り課題でAI利用を前提にし、AIとの会話の記録(transcript)を提出させる。画面共有ではないが、「出力」ではなく「過程」を見る点は同じだ。[1]
  • Google:2026年後半から一部のソフトウェアエンジニア面接でGemini利用を許可するパイロットを予定と報じられている。評価対象は、prompting、出力の検証、デバッグ。[2]
  • Meta / McKinsey:報道ベースでは、AIアシスタントを使う面接を準備・試行中とされる(公式一次情報ではないため確度は中)。[1]

これらは「AIを使わせる面接」への移行を示す代表例だ。共通するのは、AIを隠す対象から、観察する対象へ変えたこと。AIが日常業務の中にあるなら、面接もそれを前提にしたほうが、入社後の実務に近い——という発想だ。この流れは採用に限らない。次に見るように、評価軸そのものが動いている。

旧:禁止する 今:許可して観察する AI利用 隠す・裏で使われる prompting検証(validation)デバッグ・判断 Canva・Arcade・Google・Zapier…AIを「観察する対象」に変える企業が増えた
禁止しても裏で使われる——ならば使わせて、prompting・検証・判断を観察する。面接の前提が反転した

03AI活用力の​中身:promptではなく、​文脈と​検証と​判断

では「AI活用力(AI fluency)」とは、具体的に何を見る力なのか。ここでいちばん参考になるのが、AIを全社に組み込んだZapierの整理だ。

Zapierは、AI fluencyを「効果的に・責任を持って・自信を持って、日常業務でAIを使えること」と定義し、単なる操作ではなくワークフローへの組み込みまで含めている。そして2026年3月、同社は採用ルーブリックをV2へ更新し、最低ラインを引き上げた。ポイントは「一回きりの指示(one-off prompt)」ではなく、繰り返し使える仕組み(repeatable systems)、中核業務への組み込み、成果への明確な影響を最低ラインにしたことだ。つまり「使ったことがある」では足りず、「仕事の流れに組み込めているか」を見る。[3][4]

採用支援側の実務フレームワークも、同じ方向を向いている。Recruoが公開したシニアエンジニア向けのAI活用力面接(約45分)は、4つのパートで構成されるという。[5]

  • prompt post-mortem:過去に自分がAIとやり取りした事例を振り返らせ、なぜそのやり方にしたかを説明させる。
  • live AI-assisted task:その場でAIを使って課題を解かせ、進め方を観察する。
  • hallucination trap:AIがもっともらしい誤答を返す状況をわざと作り、候補者がそれに気づけるかを見る。
  • meta question:AIをどこで使い、どこで使わないかの判断基準を問う。

並べてみると、評価されているのはprompt文の巧みさではない。文脈を渡す力、出力を疑う力、間違いに気づく力、任せる範囲を線引きする力——AIに仕事を渡す「前後」の判断だ。

ダークテーマのAI活用力評価ダッシュボードのUIモック。prompt post-mortem・live task・hallucination trap・meta question の4つの評価パネルが並び、それぞれにスコアと観察メモが表示されている
評価されるのはprompt文の巧みさではなく、文脈・検証・判断——AIに仕事を渡す前後の力(Recruoの4部構成をUI化)

04画面共有で、​本当に​見える​もの

なぜ「画面共有」なのか。それは、いま挙げた判断が、成果物だけを見ても分からないからだ。完成したコードや資料は、AIで作ろうが手で作ろうが、見た目は同じになりうる。差が出るのは過程のほうにある。画面を共有してもらうと、次のようなことが見えてくる。

画面共有やり取りの可視化 ① どの文脈を渡すかいきなり聞くか、前提を渡すか ② 出力を疑えるか鵜呑みか、検証の手を持つか ③ 反復の方向が良いか闇雲か、原因を切り分けるか ④ ログ・記憶があるか消えるか、次回に残すか ⑤ 人間が判断する場所を分かっているか何でも任せるか、最終判断は持つか
画面共有はAIとの"やり取りの質"を可視化する——見るべきは「使ったか」でなく「間違いにどう気づき、どう立て直したか」
  • どの文脈を渡しているか:いきなり質問を投げるのか、業務ルールや過去の経緯、完了条件を先に渡してから頼むのか。
  • 出力を疑えるか:返ってきた答えを鵜呑みにするのか、テストや裏取りで検証する手を持っているか。
  • 反復の方向が良いか:うまくいかない時、闇雲に投げ直すのか、原因を切り分けて次の一手を決めるのか。
  • 作業ログや記憶を持っているか:その場限りで消えるのか、次回に使える形(メモ・指示・手順)で残しているか。
  • 人間が判断すべき場所を分かっているか:何でもAIに任せるのか、危ない操作や最終判断は自分で持つのか。

要するに、画面共有はAIとの「やり取りの質」を可視化する。面接で見るべきは「AIを使ったか」ではなく、「AIが間違えた瞬間に、どう気づいて、どう立て直したか」だ——という言い方が、この変化をいちばん的確に表している。

05次の​ポートフォリオは、​「作業OS」に​なる

ここまでを踏まえると、これからのポートフォリオは、完成品の一覧だけでは足りなくなる。成果物ではなく、"成果物が生まれる仕組み"を見せられるかが問われ始めている。

個人の便利技(上手な指示の集まり)ではなく、業務をAIが扱える形に分解した運用の型——SNSではこれを「Company OS」と呼ぶ文脈も出ている(ただし具体的な効果や人数の数字は未検証なので、ここでは概念として扱う)。たとえば、会議 → 要点整理(brief)→ タスク化 → ナレッジに記録 → 次アクション、という一連の流れを、AIが繰り返し回せるパイプラインにしておく。そういう「作業OS」を持っているかどうかが、AI活用力の証拠になる。

ダークテーマの作業OSパイプラインのUIモック。会議・要点整理・タスク化・ナレッジ記録・次アクションの5つの工程が横に連なり、AIが各工程を処理して繰り返し回している様子
会議→要点→タスク→記録→次アクションを、AIが繰り返し回せるパイプラインに——これが「作業OS」

私たち電脳技巧集団(AI職人ギルド)も、日々の開発をこの形で回している。作業のルールを AGENTS.md に契約として書き、調べたことや判断をナレッジ(Wiki)へ戻し、AIの出力は自動検証を通し、外部送信や最終判断は人間が承認する(HITL)。この記事自体も、情報収集 → 深掘りレポート → 記事化、という定型のパイプラインから生まれている。派手な話ではないが、こうした「仕組みで回す」やり方が結果的にいちばん強い証拠になる——というのが、今回の変化と重なるところだ。

06注意点:画面共有も、​万能ではない

一方で、「画面共有すればAI活用力が正しく測れる」と単純化するのは危うい。冷静に見ておくべき点を挙げる。

  • 評価する側のAIリテラシーが低いと、見誤る:良い使い方を「遅い」と誤解したり、派手なだけの使い方を「上手い」と評価してしまう。
  • ツール差・環境差による不公平:候補者が使い慣れたツールや、作り込んだ環境の差が、実力以外の部分で結果を左右しうる。プライバシーや機密、録画の保存にも配慮が要る。
  • 「AIショーケース芸」の危険:仕組みを持っているように"見せるだけ"の演出も出てくる。だからこそ、成果物・作業ログ・検証・失敗からの修正まで含めて見る必要がある。
  • AI活用力に寄せすぎる危険:ツールの扱いばかりを重く見ると、ドメイン知識やチームワーク、倫理、セキュリティ判断といった、本来もっと重要な力を軽視しかねない。

採用支援のPinnacleは、この点を鋭く整理している。AI利用を「許可する」だけでは評価の質は上がらない。それは単なる設定の切り替え(permission toggle)にすぎず、本当に必要なのは面接そのものの再設計——質問の作り方と、面接官の訓練まで変えること、だと。[6]AIを使わせるかどうかは入口の話で、肝は「何を、どう見るか」の設計にある。PM採用でも「AIでproductを作る力」と「AI productを作る力」を分けて評価する動きが出ており、職種ごとに見る中身は変わる。[7]

07自分の​仕事で​試す:見せられる​AIワークフローを​作る​5ステップ

最後に、この変化を「自分ごと」にするための、実践的な手順を置いておく。採用される側でも、AIを業務に入れたい事業者でも、まずは自分の仕事を1つ、画面共有で見せられる流れにしてみるのが早い。

1文脈を1枚に 2任せる/判断の線引き(HITL) 3検証の手順を決める 4やり取りとログを残す 5もう一度回して再現性を確認 「一発芸」を「繰り返せる仕組み」に変える5工程
この5工程を通すと、あなたの仕事は「AIを使った成果物」から「AIを組み込んだ仕事の流れ」に変わる
  1. 業務を1つ選び、AIに渡す前に「文脈」を1枚にまとめる。業務ルール・過去の経緯・完了条件を先に渡す。いきなり質問を投げないだけで、出力の質は変わる。
  2. AIに任せる範囲と、人間が判断する範囲の線を引く。危ない操作・外部送信・最終判断は自分で持つ(HITL)。「何を任せないか」を決めるのが、実は活用力の中核だ。
  3. 出力を検証する手順を決める。テスト・裏取り・別の観点での問い直しなど、"AIの間違いに気づく関所"を工程に組み込む。もっともらしい誤答を疑えるかが分かれ目になる。
  4. やり取りとログを残す。使った指示、下した判断、失敗とその修正を、次回に使える形で残す。これが「一発芸」を「再利用できる資産」に変える。
  5. 同じ流れをもう一度回して、再現性を確認する。一度うまくいったやり方が、翌週も、別の案件でも回るか。繰り返せる仕組みになって初めて、それは「仕組み」と呼べる。

この5つを通すと、あなたの仕事は「AIを使った成果物」から「AIを組み込んだ仕事の流れ」に変わる。そして、その流れこそが、これからいちばん問われるAI活用力の証拠になる。「AI使えます」と言う代わりに、画面を共有して黙って回して見せる——たぶん、それがいちばん速い。

AI活用力を、どう見るか。評価の入口が「言う」から「見せる」へ動いた変化を、一枚に。

見る観点「AIを使えるか」で見る(旧)「作業の流れを見せられるか」で見る(今)
評価の入口履歴書・自己申告・資格画面共有・実ワークフローの観察
何を見るかprompt文の巧みさ・単発の出力文脈投入・検証・判断・反復・記録
面接の姿勢AI利用を禁止する許可して観察(+質問と面接官を再設計)
分かれ目正解にたどり着いたかAIの誤りに気づき、立て直せたか
ポートフォリオ完成品の一覧成果物が生まれる"仕組み"(作業OS)
最低ライン使ったことがある繰り返し回せる仕組みに組み込めている

※ 本記事はBusiness Insider・Zapier・Recruo・Pinnacle・Maven等の公式ブログ/報道を、AIを業務に使う側の観点から解説したもの。事例・数値は公式/報道時点の引用であり、CAG自身の検証結果ではない。X投稿やSNS由来の主張(「Company OS」の効果・人数等)は本文取得が限定的なため未検証・象徴的シグナルとして扱っている(v0・2026-07時点)。

脚注・出典

  1. Business Insider「More hiring managers want you to prove you're good with AI during interviews」(2026-02-13)。Canva(画面共有でAIとのやり取りを観察・CTO Brendan Humphreys)、Arcade(AI会話transcript提出・CEO Alex Salazar)、Meta、McKinsey(Lilli利用面接パイロット)の事例。businessinsider.com
  2. Business Insider「Google plans to let software engineers use AI assistants in job interviews」(2026-05-07)。Gemini利用パイロット、prompting/output validation/debuggingの評価。Google広報が確認と報道。businessinsider.com
  3. Zapier「One year later: Raising the AI fluency bar for every Zapier hire」(2026-03-31)。全候補者評価、V2ルーブリックで repeatable systems・core workへの組み込み・clear impact を最低ラインに。zapier.com
  4. Zapier「How to measure your AI fluency」。AI fluencyを「effective, responsible, confident」な日常業務でのAI利用と定義し、workflow integrationを含む。zapier.com
  5. Recruo「Assess AI Skills in Senior Engineers: 2026 Framework」(2026-04-20)。約45分のフレームワーク。prompt post-mortem/live AI-assisted task/hallucination trap/meta question の4部構成、screen shareを明示。recruo.com
  6. Pinnacle「Should you redesign the technical hiring process to allow AI use?」(2026-06-05)。AI利用許可は permission toggle ではなく interview redesign trigger。質問設計と面接官訓練の再設計が必要という整理。heypinnacle.com
  7. Maven「How to interview product managers for AI fluency」。PM領域でも「AIでproductを作る力」と「AI productを作る力」を分けて評価する流れ。maven.com
  8. X(Aakash Gupta ほか)の「AI fluencyはlive screen shareで見える」論点、および「Company OS in Claude Code」文脈。本文取得が限定的なため象徴的なSNSシグナルとして扱い、個別の数字・運用詳細は未検証。本記事は外部発表・報道の解説であり、CAGが検証した事実ではない。

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